その腕に抱き締めて


「ククク…さすがは私の鬼道。やはり美しい…」
「ミスターK? 一体何を見てるん…です、か…」
一人部屋で笑っているKこと影山にフィディオは不思議そうな顔をしてその腕に抱いている物を見る。瞬間、フィディオの表情は凍りついた。
「……キモい」
「き、キモいだと!? 私の鬼道に対する愛の囁きがキモいだと!?」
「その表現の仕方も鳥肌が立つほど気持ち悪い」
「くうっ! ストレートに言い過ぎだろう! 私の硝子のハートが音を立てて壊れてしまっても良いのか!?」
「あ、はい。一向に構わないですよショタコン」
「何だとグハアァァァ!!」
ダメージを受けつつも影山はその両腕に抱いているものを離しはしなかった。影山の腕の中には、ほんのりと顔を赤らめ、かつ上目遣い気味にこちらを見つめる、イナズマジャパンの天才ゲームメーカー――鬼道有人の姿がプリントされた、白い抱き枕があった。
「いつ作ったんですかこれ。CGですよね」
「何故決めつけ!? 疑問形ではなく決めつけ!? ふ、残念ながらこれは本物の鬼道がポージングした貴重な物なのだ!」
「USODA!!」
「何故英字表記なのかはさておき。本当だ」
「え、何言ってるんですか! キドウは見るからに貴方のこと嫌ってましたよね? 嫌ってる貴方を喜ばせるような真似、する訳ないじゃないですか」
「だからストレートに言い過ぎだ!! もうちょっとオブラートに包んだ言い方をしてくれないと!」
「あ、俺日本人じゃないんでそういう器用な真似出来ません」
「嘘つけ! 前私に向かって敬っているように見せかけた悪口言ってきただろ!」
ぜぇはぁと肩で息をしながら影山はツッコミを入れる。おおーとフィディオに拍手されるが、全くもって嬉しくない。心なしか潤んだ瞳で見つめてくる鬼道を、サングラスの後ろの瞳でいとおしそうに見つめた。
「――で、もしミスターKの言っていることが真実だったとして、まあ俺には到底信じがたいですけど…。一体どうやってキドウに会ってきたんですか? マモルやフドウに阻止されてませんでした?」
「な、何故お前がそれを知っている!」
「それは俺が俺だからです」
「それは答えになっていないが!?」
影山のツッコミを無視してほら、とフィディオは続きを促した。不服そうな顔をしているが普通にスルーした。
「……まあこれは私が直接撮ったものではないけどな」
「なんだやっぱりか。ミスターKが直接頼んで了承してくれる筈ないですもんね!」
「私にはお前のその輝かんばかりの笑顔が痛いんだが」
自称硝子のハートに傷を負い、影山はなんだか泣きたくなった。だが何とか堪えてニコニコと残酷なほど純粋な笑顔を浮かべているフィディオを見た。
「じゃあこれは一体どうやって?」
「……イナズマジャパンが人気のあるメンバーの抱き枕を作ったと聞いて、その製作を担った印刷所に金にものを言わせて入手した」
「え!? イナズマジャパンが!?」
「お前の食いつくところはそこなのか」
「イナズマジャパンということは、まさかマモルの抱き枕も…!?」
「いや、確か円堂の抱き枕は無かったと思うが」
「チッ何だよ使えねぇな」
「イタリアの白い流星が黒い流星になった!!」
「全然上手くないですが?」
「やっぱり黒い! 腹黒い!」




その腕に抱き締めて


(全く良い歳してキモいな)(何この子酷い)


2010.08.02

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