榊04 | ナノ







プロポーズ大作戦



〜榊大地の場合〜

「これもらってくれるかな」
そういって差し出された箱にかなでは目を瞠った。かなでの手のひらサイズの四角い布の箱。これはどう見ても指輪の箱だ。しかも有名ブランドのロゴまで入っている。前に雑誌を見ていたときに冗談半分でこんなのが結婚指輪だったらいいなと言ったときに指をさしたブランドだ。
『結婚』
かつて自分が言った言葉を反芻し、かなでは箱を差し出した相手、榊大地と箱を交互に見比べて恐る恐る口を開く。
「わ、わたしなんかでいいんですか」
「なんか、じゃないよ。ひなちゃん、ひなちゃんがいいんだ」
ひなちゃんだからお嫁さんにしたいんだよと囁かれてかなでの顔が赤く染まる。
「お嫁さんになってくれますか、ひなちゃん」
そういわれてかなではこくりと頷こうとし、そこではたと動きを止める。

あれ、結婚するってことは・・・もしかして

一つの可能性に気付いてかなでは狼狽した。結婚したらもう二度とそうならなくなるのかと思うと即決して頷くのをためらってしまう。
「どうしたの、ひなちゃん」
動かなくなったかなでに不審そうに大地が問いかける。かなではそれでもしばらく停止して、それから油の切れたからくり人形のようにぎこちなく動いて大地を見上げた。
「・・・くなっちゃいます」
「え?」
「お嫁さんになったら、ひなちゃんじゃなくなっちゃいます」
大地先輩にそう呼ばれるの好きだったのにというかなでに大地は目を丸くして、それからなんだと苦笑した。
「びっくりしたよ、もっと深刻な話かと思ったな」
「し、深刻ですっ」
半泣きになって反論するかなでに大地は軽く笑って、それから不意に真剣な表情になった。
「そうだね・・・じゃあこれからはかなでって呼んでもいいかな」
「え」
「ひなちゃんじゃなくなるなら、かなでだよね」
そういってふふっと笑うとかなでの顔が瞬時に真っ赤に染まった。そんなかなでを愛しく思いながら大地はあらためてかなでに向き直る。
「お嫁さんに来てくれますか?かなで」
「は、はいっ大地さん」
下の名前で呼ばれるともっと特別な感じになるんですねと頬を染めて笑うかなでに、がらになく大地も照れながらそうだねと笑った。

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