大地03 | ナノ




ぐりーんぱれっと




※拍手再録

アイスコーヒーが飲みたいね?たまにはお茶でもどうだろう?
そういって誘うつもりがいつだって
「はい、どうぞ」
といって手渡される紙パックに榊大地は微かに頬を引き攣らせた。別にアイスコーヒーをせがんでいるつもりはない、 というよりむしろそれを口実にお茶なんていかがとかいいたい、のだが目の前で紙パックのアイスコーヒーを突き出している少女小日向かなでにはそれを全く理解していないらしく得意満面の笑みでこちらを見ている。
「君にそういうと、こうなるんだった」
半分嫌味を込めて受け取っもかなでには上手く伝わらない。悪意とか敵意とかそういうものを感じるセンサーみたいなものが欠如しているのだ。ただ純真に、まるで自宅で飼っている豆柴見たいに褒めてと目を輝かせている。
「…あーもぅ」
「ひゃっ」
そんな目で見られたら撫でるしかないだろうと大地は苦笑してかなでの頭をぐりぐりと撫でた。かなではしばらく気持ちよさそうに目を細めていたが、はっとしたように大地の手を振り払って数歩後退する。
「こ、こども扱いしないで下さい!」
そういってぷんぷん怒るかなでに男心のわからない子はこどもだよと内心突っ込みつつ、大地ははいはいと肩を竦めた。ここまでがいつもの光景。後はかなでがぷんすか怒りながらどこかに去っていくだけだ。
寸分違わずに毎日繰り返すその茶飯事を、大地は今日こそは変るべく普段は詰めない距離を一歩踏み込んだ。
「ひなちゃん」
「はい?」
まるで警戒心というものを知らない子犬がやるみたいに真ん丸な目でこちらを見上げるかなでに大地はニッコリと笑いかける。
「紙パックもいいけどさ」
「?」
「たまにはグラスで飲みたいと思わない」
「グラスで?」
かなでは不思議そうに首を傾げた。グラスでコーヒーなんか売ってない…そう思って大地を見上げるとぎゅっと右手を掴まれた。
「もう、なんでわかんないんだろうね」
あんまり直接言うのは得意じゃないんだけどなと大地は言って微かに頬を染めた。
「一緒にお茶にいかない?」
「お茶?」
喫茶店?あ、でも今日は手持ちがないとかなでがいうと、大地は脱力したように肩を落とした。

そうじゃない、そうじゃなくてさ

なんで上手くいかないんだろうと息を吐いて、でもそんな彼女を好きになったのは自分かと自嘲する。
目の前で落ち込んだり笑ったりしている大地にかなでは不思議そうに首を傾げた。
それを見て、大地はまた苦笑すると身屈めてかなでの耳元に唇を寄せる。
「デートに誘っているんだけどな」
「えっ!?」
びっくりしたようにかなでが大地を見上げ、それから顔を真っ赤に染めた。意外な反応に大地も目を丸くしていると、かなではしばらくもじもじしてそれからこくりとうなづく。
「わ、私も大地先輩のこと好きです」
「えっ!?」
突拍子もない言葉に今度は大地が驚いた。

好きってなんだ?いや好きだけど、いきなり告白とか…

「もしかして」
混乱する頭をどうにか整理して大地は一人呟く。

彼女のあたまの中では

デート=恋人=付き合う=告白

というなんとも稚拙な方程式でも出来上がっているのだろうか。
だとしたらなんと都合のいいことだと大地は感心して、それに便乗した。

「俺も好きだよ。だからデート了承してくれるかな?」
大地の台詞にかなでが茹蛸見たいに顔を真っ赤にして頷いた。





あとがき
拍手再録小説。かなでの脳はきっととんでもない方程式がいっぱいつまっているハズです

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