新01 | ナノ




おれんじぱれっと





※拍手再録


「かっなでちゃん!!」
カラリと晴れた夏の午後。菩提樹寮に今日も明るい少年の声が響く。それと同時に背中にどんと衝撃が走ってかなでは前につんのめった。
「ひゃっ」
その拍子に持っていた洗濯物が落ちてばらばらと床に広がる。
「あー、わーごめんっ」
背中から抱きついてきた人物がそういって洗濯物を拾おうと手を伸ばす。Tシャツに靴下、スカートにキャミソール果ては下着にまで手を伸ばし、コラとそれを阻止してかなではもうっと頬を膨らませた。
「駄目ですよ新くん、急に抱きついちゃ」
あと下着は拾っちゃいけませんというと抱きついてきた人物水嶋新はしゅんと犬のように頭を垂れた。
「だって後ちょっとで離れ離れになっちゃうんだよ?彼氏としてはもうちょっとスキンシップがしたいというか」
それに下着ぐらい彼氏なんだからいいじゃんと言う新にそんなわけないでしょうとかなでは頬を赤らめる。まだ付き合い始めて日も浅い二人だ。下着を触られるのには流石に抵抗がある。駄目駄目と訴えるかなでに新はむぅっと頬を膨らませた。
「彼氏なのに」
「彼氏だからって駄目なものは駄目なの」
「抱きつくのも?」
「そ、それは時と場合によります・・・今回みたいに物を持ってるときに急に抱きついたら危ないでしょ」
洗濯物だからよかったけれど割れ物だったらどうするのとかなでは言って洗濯物を集めはじめた。勿論最初に拾うのは下着だ。ついで新が拾った洗濯物の一部を受け取る。
正論にうぅっと唸りながらそれを見ていた新だったが、やがて何を思ったのか急に立ち上がってぱたぱたとキッチンのほうへかけていく。
「新くん?」
普段は粗相をしたらお説教が終わる前にどこかに行くような子ではないのだが、とかなでは首をひねった。ハルはそうでもないと言い張っているが、かなでの知る限りでは水嶋新は怒られるとわかっていて逃げ出すほど臆病な人間ではないはずだ。
再度首をひねって考えてみるが、これといった理由も原因も思いつかない。とりあえず部屋に戻ろうとばらばらになった洗濯物を乱雑に積み上げかなでは再びそれを両腕に抱え込んだ。よいしょと立ち上がって部屋に向かおうとした瞬間―――
「かなでちゃんっ!!」
「ひあっ」
急に背後から声をかけられ驚いて持っていた洗濯物がまた床に散らばる。あぁっとかなでは小さくうめき声を上げて、背後の人物を振り返った。
「新くん急に声かけたら駄目っびっくりするから」
「わー、ごめん」
なんだか最初のやりとりを思い出してかなではやれやれと頭を振った。新はしばらくしゅんと肩を落としていたが、あっと小さく声を上げて空になったかなでの手にぐいっと何かを押し付けてくる。
押し付けられた物の冷たさにきゃあとかなでが声は声を上げた。なんだろうと視線を落とすとレモン&グレープフルーツ、オレンジ風味と書かれた鮮やかな橙色の缶が目に飛び込んでくる。再び新に視線を戻すと、まるで主人の機嫌を伺うような目をした新と視線があった。
「この間みつけたんだ・・・おいしそうでしょ?かなでちゃん、オレンジ系好きかなって思って買ったんだけど・・・」
嫌い?と自分よりも小さい人間を器用に上目遣いで見上げた新にかなではまたため息をついた。これでは彼氏というよりはまるでご機嫌を伺うわんちゃんだ。漫画やアニメだったらきっと耳や尻尾をぺたんとさせているに違いない。
これで許さないというと落ち込むか、行動がエスカレートするのは火を見るよりも明らかだったのでかなではやれやれと首を振ってにっこりと笑った。
「今回はこれで許してあげます、けど」
次回はありませんからねというと新はうんと力いっぱい頷いた。

それを遠巻きに見ていた八木沢と東金がううんと首をひねって顔を見合わせる。
しばし沈黙の後東金が小さく呟いた。
「飼い主と犬」
「いいすぎです、せめてカカア天下と」
「それもどうやろなぁ」
フォローになってないんちゃうのと近くを通りがかった土岐が突っ込んで二人はまぁ当人同士が幸せならいいんじゃないかと呟いた。


あとがき
珠色ED後とかほざいてみる。新難しい・・・犬なイメージが先行しすぎてキャラがなかなかつかめません。ちなみに新と書こうとして何度も大地と書いたのは秘密です。何にも似てないのにね。不思議不思議。

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