律01 | ナノ






ネイビーパレット



※拍手再録

「律くん律くん」
夏休みも残すところ後わずかになった頃、寮のサロンでかなでは水槽にへばりつきながら新聞を読んでいる律に声をかけた。まわりでは他校生がまもなくやってくる別れの日を惜しんでか談笑を楽しんでいる。
「なんだ?小日向」
その雑談には加わらず、自分のペースを貫いていた律はかなでの声に腰を上げた。かなではおいでおいでと律を手招きすると、水槽の中を指差す。
「金魚、金魚」
こつこつと指で軽く叩いてかなでは水槽の中の2匹の金魚を指差した。赤い小さな金魚と黒い大きな出目金。夏祭りの日に苦心して会得した金魚だ。それが仲良くよりそうように水槽の中を泳いでいる。
「ああ、金魚か」
横に立ち、腰をかがめて同じ目線で水槽を覗き込むとふふっとかなでが笑った。
「面白いの。最初はね赤い金魚が黒いのを追いかけてるんだけど、赤い金魚が向こうへ行こうとするとね」
黒い金魚があわてて追いかけて来るんだよ、かなではそういってちらりと律に視線を向ける。律は暫く金魚を観察していたがかなでの視線に気がついて視線を向けた。
「金魚、似てるね」
「ああ・・・俺たちと一緒だな」
かなでが一生懸命律を追いかけて、しかしかなでが去ろうとすると律が慌てて引き止める。
まさしく一緒だなと笑うとかなでがそっと顔を寄せて律の頬にキスをした。
「これからも頑張って追いかけるからね」
「それはこっちの台詞だ」
そういって律はかなでの唇にキスを落とした。


一方そのころ

「なぁ、あれ、なんとかなんねぇのか如月弟」
「あかん、目の毒やわ。どうにかしてな弟くん」
「か、かなでちゃんがぁっ」
「水嶋うるさい」
「ああ、でもちょっと目の毒ですよね。どうにかなりませんか」
四方八方から幼馴染と兄に対するクレームを受ける響也は頭を抱えて机に突っ伏した。

むしろ俺が何とかして欲しいよ!

その言葉が二人に届くことは永遠になかった。


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