土岐03 | ナノ






ばいおれっとぱれっと





夏の終わりにかなでが風邪を引いた。もともとぽえぽえとした少女であったが、今日はいつも以上にぽえぽえしているなと思っていたらどうやら熱で朦朧としていたらしい。
「なんかふわふわする」
そういったまま寮のサロンの机の上に突っ伏して動かなくなり・・・そこで蓬生はようやく目の前で起こっている事態に気がついた。
「ちょっと、小日向ちゃん?」
「なんだかぐらぐらする」
「ぐらぐらって・・・顔真っ赤やん。風邪や」
「えー」
「風邪」
こんな日に限って保護者役の彼女の幼馴染はどちらも出払っている上に騒がしい吹奏楽部の面々は観光のため外出、東金と芹沢は所用で出かけていて暫くは戻らない。念のため、彼女の隣室の支倉はどうしているのかときくと、特ダネを探して出かけたから夜まで戻らないと思う、との返事が返ってきた。

なんてタイミングの悪い子や

内心悪態をつきながら、熱でぐてんぐてんになってしまったかなでを蓬生はどうにか立ち上がらせた。
「部屋いこ、悪化する」
「えーっやだ」
「やだ、やないやろ。いくつやねん」
熱の所為ですっかり幼児退行してしまったかなでに蓬生はそういって苦笑した。熱で熱くなった彼女の体を抱き上げながらこのままなら簡単に神戸に攫ってしまえるのではないかと思う。
だが、彼女と約束したのだ。そしてそれを自分は信じると決めたのだ。だからかなでを連れて行くようなことはしない。

彼女が来てくれるのを神戸で待つ

それは二人だけの約束だ。叶うかどうかは正直五分五分だと蓬生は思っているが信じてみようと決めた。そしてそれで裏切られたとしても、後悔はしないだろう。

小日向ちゃんにつけられた傷やったら、最高や

きっとそれは永遠に残る深い傷になるだろう。だが、その分だけ彼女を愛したという証にもなる。自分にも両親譲りの情熱があるのを蓬生は改めて感じた。

「でも、やっぱ痛いんはいややな。出来れば傷つけんといてな」

部屋に運ぶために抱き上げた少女の体をぎゅっと抱きしめると、思いの他かなでもぎゅっと蓬生にだきついてきた。反射的なものかと少女の顔を覗き込めば、柔らかく笑うかなでと目が合う。

「蓬生さん、大好き」
「・・・っ」

なんの脈絡もなしにそういわれて蓬生は顔に血が上るのを感じた。飄々としていてどこかつかみ所のないのが売りの蓬生だ。慌てて顔を隠そうとしたが、両手で彼女を抱えているためにそれは叶わない。それにかなでは熱で朦朧としているようだから、こんな顔を見られたところで彼女はおぼえてさえいないだろう。

「今日は特別や」
「?」

かなでの額にキスを落とし、蓬生は頬を染めて笑った。






あとがき

このあとお部屋でおいしく食べr・・・(以下自主規制)。かなでと蓬生でまともなラブラブが書きたかった・・・のになんだこれ?まあ、ラブラブといえばラブラブ・・・な気がしなくもないです。途中蓬生さんがMっぽい発言をしているような・・・?もいっそのことかなでちゃんにたまらなくなった蓬生がかなでを押し倒しているところに返ってきた幼馴染兄弟が「かなで、無事か」的にはいってきてわー、きゃーとか阿鼻叫喚な状態になったら最高だと思います。

因みに以下は蛇足です。東金と芹沢。会話のみ。




「副部長が風邪を引いたそうです」
「なに、小日向の次は蓬生か」
『・・・・・・』
「邪推してしまいますね」
「ふん、とりあえず蓬生の風邪が治るまで神戸に帰るのは延期だ」



みたいな感じで・・・すみませんでした(汗)




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