響也08 | ナノ





チョコ・DE・ぱにっく




〜如月響也の場合〜


※拍手再録


「もう絶対チョコなんてあげない!!」
「おおっこちらこそ望むところだ!」
売り言葉に買い言葉。そんなことをうっかり言ってしまった過去の自分を響也は真剣に抹殺したいと思った。



「はぁっ」
バレンタイン当日。如月響也は屋上のベンチで一人黄昏ていた。かなでと付き合い始めて、初めてのバレンタイン。いつもは義理だったあのチョコレートが本命になる記念すべき日・・・になるはずだったのに数日前の口喧嘩がもとで響也の手元に最愛の人からのチョコレートはない。

なんでだ
俺が何をした

そうかんがえて、いや喧嘩をした俺が悪かったのかと落ち込む。教室に入っても、授業中も部活の時間にいたるまでそんな調子であったから、引退したくせにまだ部長権限を持つ律が士気が下がると早々に響也を追い出した。帰るべき寮には帰る気になれず、部室には戻れず、結局屋上に来た響也は再びため息をついた。
「あー、本気で失敗した」
あの時なんで折れなかったんだろう、と先日の喧嘩のことを思い出せば思い出すほど自己嫌悪に陥る。

どうしよう、今から謝るべきか?でもな・・・チョコ目当てとか思われたらどうしよう
いや、実際そうなんだけど

「あーもうかんがえんの止めたっ」
響也はお手上げとばかりにベンチの上に倒れこんだ。眼前に広がる空を見上げながら、自分の情けなさにまたへこむ。と、不意に頭上に影がさした。なんだ、と見上げるとそこには響也をこんなにも悩ませるかなでが立っていて、むーっとした顔でこちらを見下ろしている。
「全然練習してない」
「・・・・・・そんな気分じゃないんだよ」
慌てて腹筋だけで起き上がり、表面上は冷静を装う。かなではふぅんと鼻をならすと響也のとなりに無言で腰を下ろす。
「な、なんだよ」
「・・・・・・響也は私に何か言いたいことはない?」
「言いたいことって」
冷たく一瞥されて響也は語尾を濁らせた。言いたいことは山ほどある、がここで言うべき台詞を間違えたらそれこそ終わりだ。

かなでが与えてくれる最後のチャンスなんだ

暫く考えたあと、響也はゆっくりと口を開いた。
「・・・ごめんな」
「何が?」
「・・・チョコ、いらないとか・・・嘘ついたこと」
響也の台詞にかなでは暫く目を閉じて、それからふぅっとため息をついた。そうしてポケットをごそごそっとあさって小さなチョコレートの包みを取り出す。
「もう、そう思うなら早く言ってよ・・・食べちゃったから響也のはもうないの・・・だから」
今年はこれで許してね。そういってにっこりと笑うかなでの笑顔が何よりも最高のプレゼントだと響也は思った。

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