天宮07 | ナノ








チョコ・DE・ぱにっく




〜天宮静の場合〜


※拍手再録


世の中には興味がない、かなでとピアノ以外には興味がない。本当のことを言ったら目の前にいた彼女は突然目くじらを立てた。
「もうそんなこと言うならチョコなんてあげませんから」
そんな事を突然言い出したかなでに天宮静は首をかしげた。何故今突然チョコの話題になるんだろうと考えて、ああそういえばそんな時期かと目を細めた。季節は冬の真っ只中。まだちらほらと雪が舞い、春の兆しは遠い。こんな寒い時期にもかかわらず、世間はあるイベントに賑わっていた。
「そういえばもうすぐバレンタインか」
「そうです、だから静さんそんなことばっかりいうならチョコあげませんよ」
かなでがそういうので、静は素直にこくりと頷いた。
「いいよ、別に」
「そう、いいよ・・・って!え」
かなでがびっくりしたように目を丸くして静を見る。静は特に気にした様子もなく当然のことのようにかなでの台詞を受け止めた。
「いいよ、チョコ、なくても」
「なくてもって・・・い、いらないんですか」
「いらないわけじゃないけど、僕はかなでさんとピアノ以外に興味を持とうとか全く思わないから」
だから別にチョコが欲しいとか思わないと言う静にかなでは悲しそうに眉を下げて肩を落とした。


「静さんチョコいらないんだって」
バレンタイン当日。かなでは放課後の教室でニアを前にして愚痴っていた。ニアはかなでからもらった友チョコをつまみながらふんと鼻を鳴らす。
「だからあんな男は止めておけと言ったのだ」
あの男に感情の機微など理解できるはずもない、とニアは辛辣だ。かなではううっと唸って自分のカバンを押さえた。中には結局持ってきてしまった静あてのチョコがある。どうしようかと悩んでいると、不意に教室の近くでクラスメイトがかなでの名前を呼んだ。
「小日向さん、お客さん」
「お客さん?」
そういいながら何故かクラスメイトはくすくす笑っている。不審に思いながらも立ち上がり、とてとてと扉に近づく。おそるおそる扉の向こう側を覗き込むと、突然目の前に赤い塊が飛び込んだ。
「わっ」
びっくりしてたたらを踏む。真っ赤な塊はバラの花束で、花束の向こうには柔らかい笑みをたたえた静が立っていた。
「せ、静さん」
なんでこんなところに?と問うと静はふふっと笑って花束をかなでの胸に押し付ける。
「バレンタインだからね」
「で、でも静さんがなんで」
「バレンタインは別に女性から男性に物を贈る日じゃないよ・・・バレンタインは大好きな人に物を贈る日だ」
だから、かなでさんに。そういって微笑む静にかなでは頬を薔薇色に染めた。


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