Au petit jour

――曙

 静かなる朝。
 目覚ましが鳴り響く。
 男はベッドからゆるりと起きると、スイッチを押した。
 再び静寂が訪れ、布団の中へ潜り込む。
 昨夜切創した左腕を庇うように仰向けに横たわる。


Un cauchemar
(悪夢)


 銀の少年……。
 あの瞳に迷いなど無かった。

 ――だが、解らない。
 何故、止めを刺さなかったのか…。


 しかし、男…
 山崎にとっては好都合であった。


き延びることが
出来たのだから



 The calm before the storm.



【Scène,Regard pur】
(Scene,純粋な瞳)


Prunelle
(瞳)


 ブルーとグリーンのオッドアイ。
 アキラは真っ白な猫と視線が合った時、戸惑いを覚えた。


 He is a painter and a professional gun.

濁りが無い瞳に
旋律を刻むのは
彼の美学が許さない





人は厳かに美しく

La mission sera accomplie secrètement.
(任務は密かに行われる)




【Scène,Organisation】
(Scene,組織)


「何故、直ぐに仕留めなかったのですか」

 真紅のソファーに座り、氷のような灰色の瞳で青年が見つめる。
 漆黒に襟首までの髪。
 唇の下に黒子が一つ。
 この青年が犯罪組織Wiseの頭角であり、アキラの育ての親である。
 名は――槇野真司。
 真司は見た目こそ20代だが、実年齢は33。

「答えなさい。アキラ」




【Scène,Le passé】
(Scene,過去)


 ――今から2年前。
 アキラが14歳の時、両親は交通事故で逝去した。
 画家としてデビューしたばかりで、世間に名も知られていない彼は、雀の涙ほどの収入で生活していた。

 ――だが、遺産も底を尽き、彼はミュールーズの路頭を彷徨っていた。

「絵を……買って下さいませんか」



 何日もパンを食べていないか細い声で鳴く。
 売れない画家の絵に興味を持つ者はおらず、幾人も素通りしてゆく。

 ピタリと一人の男が立ち止まった。

「貴方、人を殺した事がありますか?」

 思わぬ言葉に、アキラは息を詰まらせる。

「お金に困っているのなら、私が買いましょう」

「えっ?」

 アキラは驚いて顔を上げた。

「貴方の繊細な腕を」


――アキラは

に身を投じた

きるために




【Scène,Présent】
(Scene,現在)


 ――現在。Wise本社。
 アキラは真司の瞳を見つめ返す。

「私は……試したかったのです。
 山崎が故人を悼むかどうか」

「それで猶予を与えたわけですか」

 小さな溜息が零れる。

「今夜零時…。
 それまでに、山崎が懺悔しないのであれば消しなさい」

 真司の冷淡な瞳が一閃する。



――現在、AM8:00




 The time limit is midnight.
 16 hours remaining.



動き始めた




 Time and tide wait for no man.


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