Le rideau est tombé

【Scène,Une heure avant】
(Scene,1時間前)


 ――1時間前。
 犯罪組織Wise本社。

「なるほど。
 無闇な殺生はしたくありませんからね」

 真司は優雅に紅茶を飲みながら肯いた。

「私が変装して、山崎をあるべき道へ誘導しようかと……」

 アキラは目を細め、口許に笑みを浮かべた。



「全く、貴方は甘いですね。アキラ。
 山崎が反省なんてするものですか」

 真司は溜息を零し、ソーサーとティーカップをテーブルに置いた。

「――いえ、私が信じたいのは、山崎ではありません」

「それなら…なんですか?」

 灰色の瞳がアキラを見つめる。

「亡くなった少女の遺族……。
 彼等の気持ちを汲んで差し上げたいのです」


 アキラは、社を出るとブルーのカラーコンタクトをつけた。
 ニット帽を深く被り、ジャケットを羽織る。
 彼は颯爽と歩き出す。


崎に会い
真意
確かめなくては




Akira is in disguise to meet Yamazaki.




【Scène,La famille de la victime】
(Scene,遺族)


――PM:2:00


「おい、小僧。
 本当に、この家なのか?」

 山崎達は煉瓦の家の前に立っていた。

「ああ。入ろうぜ」

 アキラは事前に遺族達に会い、山崎のことを伝えていた。
 父親らしき男が顔を出すと、丁寧に中へ案内された。

「これが、娘の写真です」

 リビングに通された山崎は、少女の写真を見た。

「……これが……」

 正直なことを言えば、山崎は少女の顔を知らない。
 服装から少女だと解っただけで、まじまじと見たのは、これが初めてであった。

「……本当に、申し訳ないことをしました。
 今、仕事が山場を迎えているため、自首することは出来ませんが…。
 必ず、出頭します」

 山崎は丁寧に頭を下げると、涙を零した。

「本当に……申し訳ない」

「そこまで反省していらっしゃるなら、私は何も言うことがありません」

 父親は、柔和な笑みを浮かべて山崎を許した。


 山崎は密かに笑っていた。





 俺の罪も、命も…
 これで助かることが出来る。


いものは
何も



【Scène,La déesse du destin】
(Scene,運命の女神)


 ――依頼の契約は破棄された。
 Wiseが山崎を殺すことは無い。


 山崎は祝杯を挙げるため、酒場で大量のアルコールを浴びていた。

「ふぃっく。
 旨い酒だったぜ。
 これで誰もが俺を裁くことは出来ねぇ」

 彼は酒場を後にした。
 おぼつかない足取りで歩いていると……。
 後ろから猛スピードで車が走って来た。
 山崎は避けようとしたが足がよろめき……。

「うわぁあああ!!」


SKRiiii

SLAM


Il a trouvé une mort méritée.
(罪を犯した彼は相応しい最期を遂げた)




【Scène,Le rideau est tombé】
(Scene,幕は閉じられた)


「ついていない男ですね」

 アキラは山崎の骸を見て溜息を吐いた。

「私達が裁けなかった彼を、神が裁いてくれたのでしょう」

 真司は首を横に振ると、背中を向ける。

「行きますよ。アキラ」

 アキラは真司に続き、その場を去った。




Akira is a professional killer.
However, as he is also an artist,
he does not terrify anyone with a pure mind.
His motto is
"Beautiful death with dignity."
Yamazaki took a little girl's life.
Though Akira forgave him, the god of fate did not.
Yamazaki was given the end that he deserved.



La fin.


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