Les douze heures restantes et le garçon au chapeau

【Scène,Il reste douze heures】
(Scene,残り12時間)


Le vente souffle.
(風が吹く)


 銀の髪が風に靡く。
 彼は懐中時計をポケットから取り出した。
 時刻は昼の12時。

 ――残り12時間。

 探知機は正常に動いている。




Ce mec est juste-là...
(奴はすぐそこに…)


時間は刻まれる
ゆっくりと、確実に


How should Yamazaki spend the waning time?



【Scène,Le garçon au chapeau】
(Scene,帽子の少年)


 山崎は薄汚れたコートを羽織り街へ出た。
 パン屋で昼食を買っていると、一人の少年が呼び止めた。
 少年はジャケットを羽織り、髪がすっぽり隠れるニット帽を被っている。
 碧い瞳が山崎を捕らえた。

「おじさん。アンタ…。
 今、やるべき事をやらないと、殺されるぜ」

 山崎は訝しげに少年を見る。

「なんなんだ、お前は…」

「アンタがやったこと、Deesse(女神)はお見通しだぜ」



「なっ!? お前…!!
 こっちに来い!!」

 山崎は少年の腕を掴むと人通りが少ない路地へと連れ出した。

「お前は、何を知ってると言うんだ!」

 憤慨する山崎。
 それに対して少年は落ち着き払っている。

「銀髪の男を知ってるだろ?
 紫の瞳をした…」

 瞬間、山崎が硬直する。
 少年は面白そうにガムを噛む。

「俺はアイツの知り合いでね。
 奴は依頼主に頼まれてるんだってよ。
 アンタが反省するなら、許してやって下さい、ってね」

 山崎を小馬鹿にするようにガムを膨らます。

「反省……だと?」

 山崎の顔が蒼白する。


――らなければ
される!


Les yeux exprimant une intention meurtrière.
(殺意に満ちた瞳)


 昨夜の少年の瞳は……。
 言うなれば魔物。
 殺すことに何のためらいも持たない……


Un démon
(悪魔)


「……悪かった!
 俺は……本当に悪いことをした」

 ――そうだ。
 謝るが勝ちだ。言うだけならば容易い。
 あの娘が飛び出さなければ、俺はこんな目に遭わずに済んだのだ。
 反省……?
 それが出来たら、とっくに自首してる。

「だが、俺には大切な仕事がある。
 今、警察に捕まるわけにはいかないんだ」

 少年はニヤリと笑うと、ガムを下水道へ吐き捨てた。

「それじゃ、俺と一緒に来てくれ。
 アンタの気持ちとやらを、証明してみせな」

「何っ!?」

 山崎は目を見開いた。

「アンタが殺した娘の家族に、きちんと謝罪しな」

 少年はさっさと歩き出す。

 ――今、ここで逃げたら、間違なく殺される。

 山崎には何となく感じていた。
 どこかしら、あの紫の瞳を持つ少年と、この碧い瞳の少年は似ている……と。




謝罪すれば
われる


Sa fourberie.
(彼は悪知恵が働いた)


Yamazaki follows a boy with blue eyes to go to where the bereaved family is.


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