捧げ物 | ナノ


君のせい


今日も一日が終わろうとしている。

探偵事務所の窓から覗く家々が赤く染まった太陽に侵食されていた。

名前は窓を開け放ち、肘をついてそれを眺める。

今この世界はまるで計算して創られたように綺麗だと思った。



「名前!どうしたんだ外なんて見て」



しかしその思いも突然現れた探偵によって消えてしまう。

「榎さん」

「にゃんこでもいたのか?」

「いえ、見てくださいよ。夕日がすっごく綺麗」


後ろから覆い被さるように抱きつく榎木津に名前は少し照れて、それでも軽く体を預けた。


「夕日?」

「いつもより一段と綺麗でしょ?」

「別にいつもと一緒だ」

「えー、夕焼けってけっこう毎日変わるのに」


探偵は恋人の髪を指で梳いたりきつく抱き締めたりで返事が上の空だ。
名前はそれに不満げに口を尖らせた。


「榎さん、ちゃんと聞いてます?」

「聞いてるとも!僕は太陽なんかより名前の方が好きだ!!」


そう叫び名前の顎を持ち上げさっと唇を奪った。


「ぁ……!」

「わはははは!夕日より名前の方が赤い。やっぱり太陽なんかを見てるより名前を見てる方が飽きないし楽しいな!」

「〜〜〜ばかっ!」

「何でだ、名前は綺麗で可愛い僕の恋人だぞ!」

「そ、そういうことを何で…」

「可愛いからだ。あ、また顔が赤くなった」

「赤くなんてなってません!」



尚も高笑いを続ける榎木津に気を取られ、名前は最早夕日など目に入ってない。



違う、顔が赤く見えてるのは絶対夕日が当たってるからだ、決して照れてるからじゃない!と名前は心から信じたかった。





けど、本当は夕日のせいでもキスのせいでもなくて――






















あとがき
こ、こんなのでよろしいのでしょうか…!
これ甘いのか!?と自分に問いただしたいです。

圭様に捧げます!





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