誰よりも どうしてここに来てまで昼寝なんだ。 拝み屋は読んでいた本から目を離し、座布団を折って枕代わりにしている恋人の小説家へ視線を移す。関口はこちらを向いてすやすや寝息を立てていた。 「関口君」 何となしに呼んでみるが全く反応がなくてつまらず、本を置いて関口の側へ移る。 「関口、君」 顔にかかっていた髪をそっと後ろにやる。指を掠めたその体温が心地よく、そのまま頬へ滑らした。 「んぅ…」 「…起きたのかい?」 声を掛けても再び始まった規則正しい呼吸に笑ってしまう。まだ起きないのか。 覗き込めば、世界のどこにも悪はないと信じきっている子供のような寝顔があった。意外と長いそのまつげも、やや高い体温も、かさつき気味の唇も可愛らしい。 「…巽」 喉を震わさずに囁き、僅かな唇の距離をそっと埋めた。 「……ん」 押し開かれるまつげが見える。触れ合わせた唇は出来るだけそのままでもう一度名前を呼んでやった。 すると関口は寝ぼけているのか、まだ夢現な目をゆっくり細めなんと優しく唇を押し返してきた。 予想外の動きに驚く反面、どうしようもなく嬉しくなる。 幸せそうな恋人の後頭部を引き寄せながら、溺れすぎだと自嘲してそっと目を閉じた。 愛おしい 『…ん!?きょ、京極堂!?』 『何だいうるさいなぁ』 『何って、き、君が何してるんだ!』 『馬鹿言うなよ。関口君からしてきたんだぜ?』 『なっ!?僕は何もしてない!』 螢様、寝込みを襲う中禅寺ですが受け取ってください!! ←ブラウザバック |