小説 | ナノ


恋人以上


とある休日の昼下がり。
名前は胡座をかいた木場の上で体を預けるようにもたれて座っている。無防備な姿はまるで幼子のようだが、れっきとした成人女性で、木場の恋人である。
そんな恋人は首をひねり木場を見上げる。

「ね、木場さんって好きな人に告白されたい方ですか?」
「あ?何だよいきなり」
「だから、好きな人からじゃなくて自分から告白しないと嫌ですか?」
「…別に考えたことねぇな」

顎をかきながら木場は正直な感想を返す。

「ふうん。じゃあ私のこと好きですか?」
「脈絡がねぇな。そうじゃなかったら数年も付き合ってねぇだろが」
「照れ隠しで余計口が悪くなるのも可愛いですね。あ、睨んだって駄目ですよ。慣れましたから」

木場が凄めばチンピラだって黙って顔をそむけるだろうに、名前は言葉通り対して気にもせずころころと笑う。

「そうですね。私も必ず相手から思いを告げてほしいタイプではないですし、好きだから仕事人間と付き合ってます」
「おい言葉の棘を隠せ」

そしてそのまま笑いつつ、それでは、と体を起こし向かい合うようにきちんと正座をした。


「木場さん、今までの話を踏まえてお話があります」
「何だよ畏まって」

名前は眼前の大きな両手を胸の前で掲げるように握る。そして訝しむ木場に構わず、息をひとつ吸い


「私と結婚してください」



一世一代の告白をしたのだった。










『……』
『…木場さん?』
『……おい』
『はい』
『……幸せにしてやるよ』
『ふふっ、そう言うと思った。顔真っ赤よ』
『うるせぇ!』


title→確かに恋だった