小説 | ナノ


変態とお調子者


「中禅寺さんってば変態!」

「僕の言葉のどこをどう解釈すればそういう結論になるのか是非教えてくれ」


事の始まりは私のスカート。
私はいつものように中禅寺さんの隣で本を読んでいた。長い間文字を追い続けていた目に疲れを感じ、ごろりと横になって伸びをした時、

「慎みがない」

そう言われたのだ。
彼の視線を辿ってみて、行き着いたのは乱れたスカート。太腿の真ん中辺りまではだけていた。多分横になった拍子にずれ上がっただろう。下着が見えてるわけじゃないから特に気にならないけど、そういう話じゃないらしい。

「いやでも目に入るんだ」

いやでも、とは仮にも恋人に向かってそれはあんまりではないか。しかも少なからず足には自信があるのに。ちょっとしゃくに障ったから、変態だと意地悪を言い返す。

「どこ見てるんです?そんなにこの美脚が気になりますか」

「名前君、君は自重と言う言葉を覚えた方がいい」

軽く鼻を鳴らされる。その小馬鹿にした顔、憎たらしい。
私はむきになり、寝転がったままスカートの裾を持ち上げ揺らしてみせた。勿論、下着が見えない程度に。どうせ相手にされないだろうけど、何もしないのは悔しいから。

「これ見てもムラムラしません?」

「そうだな」

しかし予想外に、仏頂面は嫌な予感のする笑いを浮かべながらこちらににじり寄ってきた。

「……え?」

「しないこともない」

「え、いやいや、あー。…って手!中禅寺さん手!」

顔の横へ手をつき、視界を埋め尽くすように覆い被さりながら太腿を撫でられる。その手はいやらしくじわじわと肌をさすり、付け根の方へ上がってくる。

「、んっ」

「僕は変態らしいからね。ご期待に応えようじゃないか」

耳元に吹き込むように囁かれる。まずい、この人本気だ。

「ちょっ、中禅寺さ」

「僕の名前に何してるんだ京極ッ!!」

「!?」

ベチンッ!と大きな音がして視界が開けたのもつかの間、西洋の磁器人形の顔が飛び込んできた。

「大丈夫か名前ッ!」

「榎さん!」

腕を引かれ体を起こせば、頭をさする中禅寺さんがそばで尻もちを着いている。

「榎さん、あんたって人は…」

「僕のいない内に名前に手を出すなんて!」

けたたましい声が変態だッと叫ぶ。
たまらず盛大に吹いてお腹を抱えたのは言うまでもない。




むっつりともいえる



『はっ、はぁ、お腹痛い…!中禅寺さんってば榎さんにも言われちゃってる!』
『何だ京極、名前にも言われたのか?』
『…榎さんには関係ないだろう』
『図星、あはははっ!!』