風邪
「ケホッ……」
季節の変わり目というのは、いくら気を付けても風邪を引いてしまうのは、致し方がないのだと思う。
朝から怠さを感じながらも、1日の仕事を何とか終えて重い身体を引きずりながら職場を後にして、何となく熱さを感じながら家路を急ぐ。
軽い風邪だと、高を括ったのがいけなかったのか。
ぼんやりとしながら歩いていると。
「やはり風邪を引いていたか」
「え?」
「朝の様子で心配になって迎えに来た。診察をしてやる」
聞き慣れた声に、顔を上げれば。
まだこの時間帯は診療中であろう、柳が心配そうな表情をして見詰めて来る。
鞄を奪われ、身長差を考慮して腰を支えながらゆっくりと歩き出す。
伝わる温もりに安堵の息を吐き、柳が務める病院にて診察をされる。
白衣に聴診器という、当たり前すぎる姿にメガネを掛けた柳の姿に、風邪とは別の何かが熱を上げる。
「ふむ、風邪の初期症状だな。少し待って居ろ、俺ももう上がる。帰って看病をしてやるからな」
「ん、ありがとう。ごめんね?」
「謝る事はない、早く良くなってくれ」
少しひんやりとした手が頬を優しく撫でてくれる。
その手が気持ち良くて、頬を摺り寄せればフッと柔らかな笑みを浮かべる柳。
軽く頭を撫でられ、待合室で終わるのを待つ。
白衣を脱いでメガネを外した柳は、薬を受け取り支払いをしてから迎えに来てくれる。
駐車場に停められた車に乗り込み、近くのスーパーに寄って買い物。
大人しく車で待って居ると、買い出しを終えた柳がすぐに戻って来てマンションへ戻る。
2人で暮らすには充分な広さのマンション。
支えられながら何とか帰り着き、寝室に連れて行かれて着替えておくようにと言い付けられ、フラ付ながらなんとかパジャマに着替えてベッドに潜り込む。
「お粥を作ったが、食べれそうか?」
「ん、食べる」
起き上がるのを手伝って貰い、クッションを背中に当てて貰い。
「ほら、口を開けろ」
「あっ……」
口を開ければ、適度に覚まされた粥を入れられる。
ゆっくりと食べれば、程よい塩気が美味しく半分近くを平らげる。
薬と水を渡され、飲み干して横になる。
「明日の朝には、今よりもラクになっている。ゆっくりと休め」
「うん、ありがとう蓮二」
「此処に居るから、寝るといい」
優しい手が、頭を撫でる。
その手に心地よさを感じ、私はゆっくりと眠りに就く。
きっと明日の朝には、熱も下がっているだろう。

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