隠された想い
放課後、いつものように図書室からテニス部を眺めながら、終わるのを待っていた。
テニス部が終わる頃を見計らって、部室に向かえば、既に制服へと着替え終わった柳が、女の子と楽しそうに話をしていた。
ただ、話をしているだけならば何も思わなかったのだが。
目の前で繰り広げられているのは、どう見てもカップルのような、至近距離で話。
時には、触れ合っていた。
柳と視線が、合う。
つばさが居るのに気が付いていながらも、変わらずに話をしている。
今までなら、溜め息を吐いて先に帰ったりしていた。
この時も、同じように先に帰ろうとしたのだけれども、つばさの足は動かなかった。
ぎゅうっと締め付けられる胸は痛み、溢れる涙で、視界が揺らぐ。
「………ん、で?なんで、そんな事するの?私って、なに?どうして、私以外の子とそんな風に触れ合うの?………やだ、やだよ………」
涙と、溜め続けた本音が零れ落ちる。
苦しくて、痛む胸に顔が歪む。
止まらない涙に、止まらない言葉。
「他の子に触れないで。私だけにして」
醜い嫉妬と、束縛。
頭では、言うべきではないと解っていても止まらない。
「好きなの、蓮二が好きなの……」
「……ごめん。ごめんね、こんな事言って……」
それだけ言うと、つばさはこの場を離れようとするが。
柳に抱き締められ、動く事が出来なくなる。
「やっと言ってくれたな」
「え?」
「いつも何も言わないからな。本当はどう思っていたのか、知りたかったんだ。すまない」
「……」
抱き締めてくれる腕に、安堵の息を吐き出す。
抱え込む想いは、暴かれてしまったけれど。
きっと、良かったのだろう。

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