隠された想い 放課後、いつものように図書室からテニス部を眺めながら、終わるのを待っていた。 テニス部が終わる頃を見計らって、部室に向かえば、既に制服へと着替え終わった柳が、女の子と楽しそうに話をしていた。 ただ、話をしているだけならば何も思わなかったのだが。 目の前で繰り広げられているのは、どう見てもカップルのような、至近距離で話。 時には、触れ合っていた。 柳と視線が、合う。 つばさが居るのに気が付いていながらも、変わらずに話をしている。 今までなら、溜め息を吐いて先に帰ったりしていた。 この時も、同じように先に帰ろうとしたのだけれども、つばさの足は動かなかった。 ぎゅうっと締め付けられる胸は痛み、溢れる涙で、視界が揺らぐ。 「………ん、で?なんで、そんな事するの?私って、なに?どうして、私以外の子とそんな風に触れ合うの?………やだ、やだよ………」 涙と、溜め続けた本音が零れ落ちる。 苦しくて、痛む胸に顔が歪む。 止まらない涙に、止まらない言葉。 「他の子に触れないで。私だけにして」 醜い嫉妬と、束縛。 頭では、言うべきではないと解っていても止まらない。 「好きなの、蓮二が好きなの……」 「……ごめん。ごめんね、こんな事言って……」 それだけ言うと、つばさはこの場を離れようとするが。 柳に抱き締められ、動く事が出来なくなる。 「やっと言ってくれたな」 「え?」 「いつも何も言わないからな。本当はどう思っていたのか、知りたかったんだ。すまない」 「……」 抱き締めてくれる腕に、安堵の息を吐き出す。 抱え込む想いは、暴かれてしまったけれど。 きっと、良かったのだろう。[ 6/53 ]← →
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