雪の日
雪が降る降ると、天気予報で言われていたが。
この数日の寒さに、今度は本当に降るのだろうなと思いながら眠りに就いた翌朝。
「おはよう、つばさ。見事に雪が降っているよ」
起きたのに気が付いたのか、柔らかな声が降ってくる。
視線を上げれば、微笑む柳の姿。
手には、白い湯気の立つマグカップ。
起き上がると手渡され、少し温めのミルクを飲む。
「おはよう、蓮ちゃん。降ってるんだ、雪」
「ああ。珍しく、な」
ホットミルクをゆっくりと飲みながら、ベッドに腰掛ける柳とのんびりと会話を楽しむ。
何もない休日の、朝。
飲み終え、リビングに2人で移動をすれば。
リビングの窓から、外の風景が見える。
雪で真っ白に包まれた、街並み。
シンッと静かな、音のない世界。
寝起き姿のまま、ベランダに出て白い息を吐きながら外を眺める。
人のない静かな街並み、音のない静かな世界。
まるで、一人になったような錯覚に陥る。
「つばさ。その姿だと、風邪を引くよ」
ふわりと一枚、大きなカーディガンが掛けられ温かな腕に後ろから包み込まれる。
ホッと一息を吐く自分に、一人を感じていた事に苦笑いを零す。
「ありがとう。そうだね、部屋に戻ろうか」
「世界で一人だと、感じたか?俺が居るぞ、つばさ」
「……ありがとう」
室内に促され、少しキツイぐらいに抱き締められる。
雪が嫌いな訳でも、何かある訳でもないけれども。
真っ白な雪に覆われた外を見ると。
寂しく感じて、泣きたくなる。
「一人じゃない、俺が居るだろう?」
「うん。ありがとう、蓮ちゃん」
擦り寄り甘えるつばさに、優しく頭を撫でる柳。
静かな世界に、2人きり。
「たまには、こんな日もいいだろう」
ソファーに座り、2人きりを楽しむ。
雪の日の過ごし方。

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