秘密の関係
「柳先輩」
見慣れた、間違いようのない後ろ姿を見付けて、声を掛ける。
「如月か」
「こんにちは。図書室ですか?」
隣りに並べば、歩調を合わせ歩いてくれる。
「こんにちは。ああ、返しながら新しいのを借りようと思ってな」
「ご一緒してもいいですか?」
「むろん、構わないよ」
一緒に図書室に行けば、静かな空間。
あまり人の居ない図書室で、静かに話をしながらお薦めされた本を借りて、図書室を後にする。
「如月」
「はい?」
「放課後な」
別れ際に、そんな言葉を貰って教室に戻る。
学校で、クラスメイトの切原を通じて知り合った風を装っているが、本当は違う。
それを知る者は、居ない。
二人だけの、秘密。
それが、楽しく嬉しい。
だからこそ、つばさは友人を家に呼ばない。
呼んだら、バレてしまう。
上機嫌で午後を終えると、足早に帰宅をしておやつとお茶を準備してから、借りた本を読み始める。
読み終える頃になると、時計は既に部活が終わってからいい時間が過ぎている事を示していた。
つばさは、用意しておいたモノを手にすると家を出る。
慣れた足取りで、向かいの家を訪ねて目的の部屋へ。
静かにドアをノックすれば、ドアが開けられる。
「お帰り、お疲れ様蓮ちゃん」
「ああ、ありがとう。ただいま、つばさ」
にっこり笑顔で言えば、室内に招き入れる柳も微笑んで応じる。
「お茶菓子持ってきたよ」
「チョコか?」
「違いますー」
笑いを含んだ問いに、頬を膨らませ答えるつばさは、クッキーの詰め合わせを取り出す。
室内にあるポットとカップを持ち出し、慣れた手付きで紅茶を淹れる。
「クッキーか」
「そっ。この間、美味しそうなお店を見付けて、買ったの」
机に並べて置けば、柳の隣りに座る。
「美味しそうだ、頂こう」
「んっ。はい、あーん」
嬉しそうに頷き、つばさはクッキーを1つ摘まむと柳の口元に持っていく。
それを受け入れ、咀嚼する柳に首を傾げて視線でつばさは問い掛ける。
「ああ、美味いな。ほら」
「んっ」
柳は視線に応え、つばさの口元へ1枚持っていけば、パクリと食べるつばさ。
「おいひぃ…」
美味しいクッキーに、紅茶で穏やかな一時を過ごす。
そんな二人は、幼馴染みであり恋人同士。
周囲には、秘密の関係。

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