弱った時には
大抵の事は、笑って済ます事が出来る。
しょうがない。こんな時もある。
そう言って、過ごせる。
それでも、どうしてもどうにも出来ない事はあって。
笑って「大丈夫」と言いながらも、心では泣いて。
そうしてどうにもならなくなると、いつも甘えてしまう。
「蓮ちゃん……」
「おいで、つばさ」
幼馴染みであり、恋人である柳の元を訪れて抱き付く。
優しく髪を梳いてくれる手は、優しく。
何も聞かずに、ただ、話を聞いてくれる。
それが、とてもありがたい。
幼馴染みでいる時には、決して漏らす事のなかった弱音。
それが、付き合うようになってから時折。
堪えきれなくなると、吐き出すようになったのは。
単なるつばさの、意地でしかなかった。
明るく笑顔で、何事にも笑って過ごす。
強い心の持ち主で在りたいと、願う。
それ故に、弱い自分を他人に見せられず。
ようやっと見つけた、唯一の場所。
「でね?私は、何度も言ったんだよ。なのに……」
「そうか。つばさは、ちゃんと言ったんだ。何も悪くない」
紡がれる、零れ落ちる言葉を一つ一つ拾い上げ。
肯定の言葉を返す柳に、頷きながら息を吐き出す。
そうして、落ち着くと柳は立ち上がりキッチンで飲み物を淹れて戻って来る。
「ホラ」
「ん、ありがとう」
受け取ったマグカップからは、温かい湯気。
中に入ってるのは、つばさの好きなココア。
温かいのを飲んで落ち着けば、またいつものように笑う。
弱った姿を見せるのは、ただ1人だけ。

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