歪んだ愛
夜の世界へと身を堕としてから、一体どれだけの年月を経ているのか。
朝日を懐かしいと思わなくなったのは、一体いつの頃か。
考えるのもバカバカしくなるぐらい、永い年月を生きてきた。
世の移り変わりを何処か他人事のように眺め、人の愚かさに嘲笑う。
けれど本当に嘲笑うべき存在は、他でもない自分自身なのかもしれないと、ぼんやりとつばさは思う。
こんな風に夜の住人へと身を堕とす事になった原因である、夜の世界に君臨する吸血鬼である蓮二は、美しく非道な男。
その男に魅入られたが最後、好きなように弄ばれそうしてその命を棄てられる。
そんな中で唯一、つばさだけが生き永られ。
蓮二の傍に居る事を赦された存在。
「蓮二、出掛けるの?」
「ああ」
「最近、多いね」
「文句あるのか?」
冷笑と呼べる冷ややかな笑みと、声。
しまった!と、思ったがもう遅い。
一気に詰められた距離。
腰を抱き寄せられ、文字通り息を奪うキス。
息というよりも、生命なのかもしれない。
カクリと、全てを奪われつばさは柳の腕の中でその活動を終える。
そんなつばさに、今度は優しくキスをして生命を吹き込む。
「………ハフッ」
「つばさ」
頬を撫でられ、視線を上げれば。
「文句あるのか?」
今度は、妖笑を浮かべ問われる。
首を横に振れば。
「いい子だな。帰ったら、褒美をやろう」
再び甘いキスが落とされ、夜の闇に消える蓮二を見送る。
つばさの命を奪うのが蓮二なら、その命を与えるのも蓮二。
何度も蓮二に殺され、何度も目覚める。
そんな歪んだ愛

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