2人のキューピッドは、黒猫
1匹の猫が、2人を出会わせた。
黒猫の『蓮』は、学校帰りのつばさが見付けた子猫。
捨てられて鳴いていた所を見付けられたのだが、猫嫌いの家族の為に、家に連れて帰る事も出来ず。
しかし、そのまま放置するには可哀想だった。
そんな時に、声を掛けたのが柳だった。
社会人の柳は、偶然にもつばさの長兄と仕事を通じての知り合いであった。
その事から、つばさは柳に懐き。
そうして、2人は付き合い始めた。
それが、つばさが中学最後の年の出来事。
高校に上がる頃には、付き合い始め。
社会人である柳のマンションに、週末になると泊りに来るようになった。
「蓮ちゃ、お仕事忙しい?」
「何故だ?」
「疲れた顔してる」
既に定位置と化した柳の膝の上に座り、つばさは柳の頬を撫でながら、問い掛ける。
監査法人に勤める柳は、場合によっては出張に出たり。
仕事によっては、夜中まで仕事をして職場で仮眠を取るような事もあった。
「そうか?」
「うん。大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
心配そうに顔を覗き込むつばさの額にキスを1つ落とし、抱き締める。
「む〜・・・。蓮ちゃん、ムリしちゃダメなの。頼りないけど、甘えてね?」
抱き締められたまま、つばさは言う。
末っ子で、年の離れた長兄に甘やかされて育ったつばさは、とにかく甘えたがりの構われたがり。
そんなつばさを兎に角甘やかして、構いたがる柳にとっては、つばさを甘やかす事が日頃の疲れを取るのだが。
つばさにしてみれば、疲れている柳の負担を少しでも減らしたいと考え。
「そうだ!ね、今日は私が蓮ちゃん洗ってあげる」
「ん?」
「いっつも、蓮ちゃんに洗って貰ってるから。お返し、ね?」
名案とばかりに、にっこり笑って柳に告げる。
何かと構いたがりの柳は、つばさが泊りに来ると必ず一緒に風呂に入って、頭に身体と洗ってやり。風呂から上がれば、キッチリとブローまでして髪を乾かしていた。
「そうか」
「うん!任せて」
ぎゅもっと抱き付き、笑顔で告げるつばさに苦笑しながらも頷く柳。
そんな2人の足元では、ネコの蓮が丸まって眠っていた。
穏やかな、一日の終わり。

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