俺を困らせたいとしか思えないな
人懐っこいと言えば、聞こえがいい。
ワケ隔てなく、誰とでも仲良くなる。
それが、いい所でもあり悪い所でもある。
警戒心が、ない。
何度言っても、直らないのは仕方がない事なのだろうか。
「ブンちゃん、ブンちゃん!新作のお菓子〜」
「お、昨日発売したヤツじゃん」
「食べよ〜」
丸井に張り付きながら、新作のお菓子を振るのはつばさ。
悪意がないのは、分かっているが。
見ていて、面白いモノではない。
「参謀、表情が怖いぜよ」
「元々こんな表情だ」
仁王の言葉に、淡々と答える。
そんな柳に、肩を竦め部室を後にする。
その後ろ姿を見送り、未だにお菓子を仲良く食べる二人に、溜息を一つ。
部誌を書きながら、2人の会話が聞こえて来る。
他愛もない事ばかりだが、時折聞こえるつばさの「大好き」というセリフに、不快な気分になる。
心が狭い。と、いわれればそれまでだが。
「蓮ちゃん、書き終わった?」
「ああ、終わったぞ」
「じゃあ、帰ろう?」
いつの間にか、丸井は帰っており。
目の前には、つばさ。
書き終えた部誌を定位置にしまい。
鍵を閉めて、2人で校門に向かって歩き出す。
自然と、つばさの手が伸びて来て柳の手を掴む。
「でね、でね」
「ああ」
繋いでいない手を一生懸命振ったりしながら、先刻の丸井との話を聞かせるつばさ。
これ以上、聞きたくはない。
「蓮ちゃん、どったの?」
立ち止まり、見上げてくるつばさに合わせて立ち止まる。
「いや」
「ウーソ。どうしたの?」
見上げて来る、大きな瞳。
「つばさは、俺を困らせたいとしか思えないな」
「え〜、何ソレ〜」
柳の言葉に、ぷく。っと、頬を膨らませるつばさ。
そんなつばさの背を押して、歩くように促す。
大人しく歩き出すつばさに、溜息を吐く柳。
「あまり、」
「ん?」
「いや、何でもない」
「へ〜んなの!」
途中で言葉を切る柳に、つばさは一言で終わらせる。
「私が一番好きなのは、蓮ちゃんだよ!!」
突然の言葉に、驚き見下ろせば。
にっこり笑うつばさ。
「大好き」
告げる言葉は、丸井に向けたモノと同じだが。
そこに込められた想いが違う事ぐらいは、分かる。
柳を困らせる事が出来るのは、つばさぐらいであろう。

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