大人びた笑み
社会人である柳と、未だ学生であるつばさとでは生活時間が異なる。
どんなに好きで、一緒に居たいと思っても。
仕事に忙しい柳の邪魔は、出来ない。
甘えて、構って欲しい。
そう思っても、疲れている姿を見てしまえば。
出来る事など、限られていて。
一緒に居る時間は、極力距離を置くようにして。
甘やかされなくても、構われなくても大丈夫なようにした。
覚えた事といえば。
「そんな顔で笑うな、つばさ」
「え?」
久し振りに会う柳の言葉に、きょとんとするつばさ。
その表情は、疲れており。
つばさは、柳の為に珈琲を淹れていた。
柳に心配を掛けまいと、笑う笑顔は大人びた笑み。
それまでの、つばさは心から笑っていたが。その大人びた笑みには、どこか苦しいモノがあった。
「そんな笑みを浮かべるな」
「え?」
「おいで、つばさ」
呼ばれるが、首を横に振って断るつばさ。
そんなつばさに、痺れを切らした柳は強引に抱き寄せる。
「ちょ、あ、れん?!!」
驚くつばさの口を、塞ぐ。
久し振りのつばさの驚きの表情に、笑みを深める。
「確かに、疲れている。だが、つばさに甘えられたいんだ。構いたいんだ。ムリをするな、つばさ」
「蓮ちゃん」
柳の言葉に、ぎゅうとしがみついて静かに涙を流す。

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