大人びた笑み 社会人である柳と、未だ学生であるつばさとでは生活時間が異なる。 どんなに好きで、一緒に居たいと思っても。 仕事に忙しい柳の邪魔は、出来ない。 甘えて、構って欲しい。 そう思っても、疲れている姿を見てしまえば。 出来る事など、限られていて。 一緒に居る時間は、極力距離を置くようにして。 甘やかされなくても、構われなくても大丈夫なようにした。 覚えた事といえば。 「そんな顔で笑うな、つばさ」 「え?」 久し振りに会う柳の言葉に、きょとんとするつばさ。 その表情は、疲れており。 つばさは、柳の為に珈琲を淹れていた。 柳に心配を掛けまいと、笑う笑顔は大人びた笑み。 それまでの、つばさは心から笑っていたが。その大人びた笑みには、どこか苦しいモノがあった。 「そんな笑みを浮かべるな」 「え?」 「おいで、つばさ」 呼ばれるが、首を横に振って断るつばさ。 そんなつばさに、痺れを切らした柳は強引に抱き寄せる。 「ちょ、あ、れん?!!」 驚くつばさの口を、塞ぐ。 久し振りのつばさの驚きの表情に、笑みを深める。 「確かに、疲れている。だが、つばさに甘えられたいんだ。構いたいんだ。ムリをするな、つばさ」 「蓮ちゃん」 柳の言葉に、ぎゅうとしがみついて静かに涙を流す。 [ 29/53 ]← →
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