「おいで」とその目に導かれ
休日は、大体がテニスで潰れる。 それでも、特に気にした事はない。 柳の部屋は、日当たりが良く微睡むには最適。 和室の部屋は、庭に面していて窓を開けると柔らかな風が入り込む。 つばさは、縁側に座り。 庭先を、ぼんやりと眺める。 部屋では、柳が机に向かっている。 何をするでもなく、つばさはぼんやりしながら眠気と戦っていた。 ヒマ、ヒマすぎる。 暖かい、眠い、寝ようかな? 脳内に浮かぶのは、単語。 「つばさ」 眠ってしまおうか、そう思った瞬間柔らかな声に呼ばれる。 振り向けば、涼やかな瞳が開かれ真っ直ぐに見つめられる。 「おいで」とその目に、導かれ。フラフラと柳に、吸い寄せられるように近付けば、腕を引かれて抱き締められる。 暖かな腕に、安堵の息を漏らす。 髪を撫でられ、背中を軽く叩かれる。 まるで、それが合図かのようにつばさは眠りに就く。 眠るつばさの額にキスを一つ落とし、満足そうに息を吐く柳。 つばさが眠りに就くのも、起こすのも自分がしたい。 そんな想いに囚われ、柳は眠るつばさを愛おしそうに眺める。[ 32/53 ]← →
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