後れ毛・細いうなじ
 肩よりも長い髪を一つに結べば、涼しくなる。
 毎日、変わる髪型。
 見慣れてる姿の筈なのに、浴衣を着て結い上げられた髪。
 覗く細い首に、少しの後れ毛。
 あらわになる、項。
 垂れる、後れ毛。
 その全てに、欲情する。
「蓮ちゃん、どうしたの?」
 いつの間にか、足が止まっていた。
 前を歩いていたつばさが、下から見上げて来る姿にすら欲情してしまう。
 普段の姿と違う。たった、それだけでこんなにも欲している。
 歩く度につばさから、ふわりと甘い香りが漂ってくる。
 その香りに釣られるように、腕の中に抱き締める。
「わっ!!れ、蓮ちゃん??」
 腕の中で、暴れなるつばさを抱き締めれば。
「お祭り、行かないの?楽しみに、してたのに」
 頬を膨らませて、見上げて来るつばさ。
 その姿に、ようやく本来の目的を思い出す。
 近所の神社で、祭りがやっているのを部活の帰りに貼ってあったポスターで知ったつばさが、行きたいと言って一旦家に戻って来ていた。
「ああ、そうだったな」
「そうだよ〜、行こう?」
 首を傾げながら、誘うつばさに頷いて手を繋いで歩きだす。
 今すぐにでも、家に帰りたい衝動に襲われるが。
 さすがに、そんな事をしたら暫く口を聞いて貰えない事ぐらい柳は分かっていた。
 ウキウキと歩くつばさと神社に行けば、そこには色々な出店が軒を連ねていた。
「うわ〜・・・・」
 目をキラキラと輝かせて、端から覗いていくつばさ。
 そんなつばさに、苦笑しながらも付いて行く柳。

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