永遠に
「つばさ」
「イヤ」
柳の言葉に、首を横に振る。
残るというならば、一緒に残りたい。
それが、つばさの願いだった。
「つばさ」
「蓮二」
勢い良く、柳に抱き締められ。
「愛してる、つばさ。これは、俺の我が儘だ。俺の分まで生きて、幸せになって
くれ」
「無理だよ、蓮二のいない世界でどうやって幸せになれるの?」
「つばさ」
「お願い、一緒に…」
「駄目だ」
「蓮二っ!」
「つばさ、聞き分けてくれないか?」
まっすぐに見つめて来る柳の瞳はいつの間にか、開かれ。
素早く、つばさにキスを落とし。
着ていた上着を羽織らせ、有り金全てを渡し。更には、互いの指輪を交換した

「誰よりも、一番愛してるつばさ」
「蓮二っ」
「笑ってくれないか?最後は、つばさの笑顔がいい」
柳の言葉に、泣き笑いを浮かべ。
懸命に涙を堪えながら、ボードに乗り込む。
甲板に残る柳に、愛を叫びながら離れる。
お互いに、もう逢えない事は承知していた。
柳の姿が見えなくなると、つばさは座り込み声を上げて、泣き叫ぶ。
愛してる。ずっと、ずっと愛してる。
上着を掻き合わせ、交換した指輪を握り締め泣き叫ぶ。
誰よりも、一番愛してる。
代わりなんて、何処にも居ない。
たった一人の、愛しい人。



無事に生き延びたつばさは、数日して柳の子を宿している事を知る。
もしかしたら、柳は気が付いていたのかもしれない。
そうして生まれたのは、元気な男の子。
『蓮司』と名付け、つばさは一心の愛情を注いで育てる。
柳が望む通り、柳だけを想い。
二人の子を育てる。
誰よりも、愛した人の子だから。
そうして、再び。
つばさは、一人。
船に乗る。
「蓮二、私ね幸せだったよ。幸せな人生だった。少し、疲れちゃった。だから、
そろそろ逝ってもいい?頑張って、ココまで来たんだ。蓮二に甘えたいよ」
甲板に出て、潮風を受けながら。
空を見上げ、そっと囁く。
その晩、つばさは幸せそうな表情で人生に幕を閉じた。



「つばさ」
「蓮二」
『逢いたかった』
キツく抱き締めあい、言葉はなくとも想いを伝えあう。
そうして、2人の時間をもう一度。

[ 34/53 ]

TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -