嘘つきな好き
この気持ちを言えたなら、どんなにラクだろうか。
軽くなら、言えるのに。
ふざけてなら、いくらでも言える。
なのに、どうしても素直な気持ちを言えないのは近すぎる距離のせいだろうか。
「行ってきまーす」
何時ものように家を出て、向かいの家をチラリと見てから歩き出す。
中学に入ってから部活に忙しい幼馴染みとは、朝の時間が違う。
学校に着く頃はまだ部活に精を出していて、それを遠くから少し眺めてから教室へと向かう。
それは、いつの頃からか日課となっていた。まだ、HRが始まるには30分は早い時間。
静かな教室で、読書を楽しむ。
「おはよう」
「おはよ」
少しずつ教室が賑やかになる頃、漸く幼馴染みが教室に姿を現す。
「おはよう、つばさ」
「おはよ、蓮ちゃん」
挨拶を交わして、読み終えたばかりの本を差し出す。
「もう読んだのか?」
「ん。この作家にしては、珍しい展開だよね?」
「ああ。だが、このような話も悪くはないな」
当たり前のように普通に会話をして、一時の楽しみを堪能する。
授業を受けて、分からないと教えて貰って。
それが出来るのは、幼馴染みだから。
けど、それだけの関係。
元々テニスが好きで、テニスの強豪校に入学をして。1年の時から、レギュラーで。
更には頭も良くて、背も気が付いた時には伸びていて、モテない訳がない。
「なのに、何で未だに一人なの?」
「何がだ?」
「なーんでもないでーす」
帰りは一緒の道のり。
淡い期待なんてしない。
この関係を壊すのが、怖いだけ。
それなら一層の事、彼女が出来ればいいのに。
「蓮ちゃん」
「何だ?」
「好きよー」
「そうか。俺もだよつばさ」
ああ。
今日も軽い言葉を交わす。
本気になんて、ならない。
早く、早く、気が付いて気が付かないで。
私は今日も軽く好きと言って笑う。
本音を隠したまま。

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