おめでとう 『To:××× 件名:おめでとう
本文 誕生日、おめでとう! ようやく、15歳だねー(笑) 一足先にお姉さんになった私から、プレゼントをあげるよ。 楽しみにしててね〜 』
0時に丁度に、そのようなメールを送る。 用意は出来てる。 明日、渡すだけだ。
わくわくとした気持ちで、私はベッドに潜り込む。 明日へと思いを馳せながら。
翌日の部活が終わる頃、教室で本を読みながら時間を潰して過ごし。 頃合いを見計らって、校舎を後にすればタイミングよく部室から出て来る柳を見付ける。 「相変わらず、モテモテですね柳さん」 「なんだ、まだ残っていたのか?」 「あら、お忘れですか?お姉さんが、プレゼントを渡すって言ったじゃないですか」 両手に持つ袋を見て、笑って言えば呆れた表情で問われて肩を竦めながら言い返す。 歩きながら、鞄から一つの封筒を取り出すとそれを柳に差し出す。 「本当はさー、悪戯心を加えてみようかと思ったんだけど。さすがに、それは可哀そうかなーと思いまして」 「待て、何だその悪戯心とは?」 「んー、ご想像にお任せします?」 疑問形で返しながら、笑って流す。 そうして、中身を見るように促せば恐る恐る封筒を開けて中身を取り出す。 出て来たのは、一冊の雑誌。 「此れは……」 『芸術新潮、夏目漱石特集』と書かれた、雑誌。 「好きでしょう?」 「ああ、ありがとう」 「どういたしまして。んで、コッチも一緒に」 もう一つと、鞄から一枚のチケットを取り出す。 チケットに書かれているのは、 『夏目漱石の美術世界展』 「雑誌を買う時にさ、中をちょっと見てみたら。丁度開催してるみたいなんだよね。で、どうせならって思ってね。両方セットで、どうでしょう?」 [ 53/53 ]← →
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