大人の夏休み
連日の猛暑続きに、さすがに身体は疲れはじめていた。
エアコンを使用すると、室内と室外の温度差により身体は堪え。使用しないと、とんでもない暑さでやはり身体は堪える。
どうしたものかと思案しているタイミングで、会員制のプールへの招待券を貰った。
休日の連休を使って、静かなホテルのプールでゆったりとした時間を過ごす事に決めた。
場所が場所なだけに、人も少なくゆったりと寛げるのがまた魅力的であり。
柳は都会の喧騒とかけ離れた静かな空間で、のんびりと泳いだりして久し振りの休暇を楽しんでいた。
プールから上がり、デッキチェアに大判の真っ白なタオルを引いて寝そべれば窓から差し込む太陽の日差しが柔らかく身体を包み込む。
腕を枕に微睡み、身体を休める。
そんな柳の元に静かに近寄る影が、一つ。
「服の上からじゃ解り難いけど、いい身体してるよね」
「……どこの痴女だ」
「あら、起きてたの?」
「起こすつもりで、来たのだろう」
溜息を吐き出しながら柳が言えば、楽しそうに笑うのはこのプールへの招待券を渡した張本人。
水着の上から大き目のパーカーを羽織り、泳ぐ気があるのかないのか。
それを指摘してやれば、きょとんとした表情を浮かべるがすぐに笑いながら。
「泳ぐつもりはないわよ?単なる好奇心かしらね、柳が今日来てる事は予想付いてたしね。どうせなら、堪能しようと思って」
「予想ではなく、フロントにでも言っておいたのであろう?大方、このホテルは懇意にしているのだろう。そうであれば、その位は造作もない」
「ご名答。つまらないわね、もう」
溜息を吐きながらチェアに腰を下ろす相手に、柳は苦笑を漏らす。
泳がないのか?と、問い掛ければ肩を竦め。
「シーツの海でなら、泳ぐけど?」
嫣然と微笑み、寝そべったままの柳の腹部に腕を伸ばし。
指で数字を腹部に書き記し、立ち上がると無言で出て行く。
書かれた数字を読み取り、柳はチェアから起き上がるとプールへと足を向ける。
もう一泳ぎしてから向かえば、ちょうど良い頃合いであろうと。
そんな休日。

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