シロツメクサ‐俺の事を思って
 一つ年下のつばさは、クラスメイトとも他クラスの人間でも、友人が多い。
 誰とでも、仲良くなれる性格なのか。
 人懐っこい性格故か、友人が多い。
 休み時間、見かけると大抵誰かしらと仲良く話しをしている。
 昼休み、偶然目にしたのは。
 つばさが、男子生徒と仲良く談笑する姿。
 背の低いつばさが、背伸びをして。
 男子生徒は、屈んでつばさの口元に耳を寄せる。
 仲睦まじい、姿。
 2人は、笑いあって立ち去る。
 その後ろ姿を、眺める事しか出来ないでいると。
 視界に入るのは、中庭に咲くシロツメクサ。
 脳裏に浮かぶのは、花言葉。
 中庭に降りて、シロツメクサを摘んで花冠を編む。
 出来上がったソレを手にして、昼食を取るべく移動をする。


「あ〜、やっと来た〜。遅いよ、蓮ちゃん!!」
「ああ、済まないな」
「どうしたの、ソレ」
「ああ、コレか?懐かしくなって、な。作ってみた」
 屋上に行けば、馴染みのメンバーとつばさが柳を待っていた。
 遅れた事を詫び、つばさの隣りに座れば。
 柳の手にする花冠に、興味を示すつばさ。
「へ〜、器用だね〜」
「つばさにやろう」
「へ?」
「花言葉を、知ってるか?」
 つばさの頭に花冠を乗せながら、問えば首を横に振られる。
「そうか」
 つばさの答えに、静かに弁当を広げる。
 興味深そうに見る、仁王達の視線をムシして食べ始める。
 そんな柳に首を傾げながらも、花冠をそのままにつばさも弁当を食べ始める。
 そうして、昼休みを終えてそれぞれが教室へと向かう。
「蓮ちゃん、花言葉」
「知りたければ、自分で調べろ。それが、俺の気持ちだ」
「は〜い」
 柳の言葉に、素直に頷くと。
 赤也と共に、教室へと向かう。
 その後ろ姿を見送りながら、溜息を一つ。
「大変だのぉ、参謀も」
 ニヤニヤと笑う仁王に、一瞥くれて教室へ向かう。
 他の誰でもない、自分だけを思って欲しい。
 そう思うのは、我侭なのだろうか。


 
 最後の授業が、偶然にも自習となったつばさは早々にプリントを仕上げると窓辺に飾った花冠の花言葉を調べるべく図書館に向かう。
 蔵書数は、県内でもかなりのモノ。
 図書館には、何度も柳と足を運んでいるので迷う事はない。
 普段とは違う場所へ足を踏み入れ、件の花言葉を探すべくつばさは、取り出した本のページを捲る。
「シロツメクサ、シロツメクサ・・・っと」
 ブツブツ呟きながら、見つけたのは。
「私を思って?」
 一体、柳が何を思って渡したのか。
 つばさには、首をかしげるしかない。
 しかし、答えるべくつばさは図書館を後にする。
 どうせこの後は、HRだけだ。
 カバンはどうせ、赤也が部室に持って来てくれるであろう。
 庭にあるパンジーをそっと一つだけ摘み取り、柳の携帯を鳴らす。
 授業中という事は、分かっているが気にしない。
 裏庭に行けば、春の香りが漂う。
 裏庭と言えども、そこかしこに春の花が咲き誇っている。
「どうした、つばさ」
「ん〜」
 送信した内容は、裏庭で待っている。
 どうやって授業を抜け出したのか、それは分からない。
 しかし、つばさにはそんな事は興味がないので。
 手にしたパンジーを、柳に差し出す。
「どうした」
「摘み取った」
「それは、いいのか?」
「あんまり良くないけど、まあ一つぐらいはいいでしょう。それが、私の返事」
 そう言い置いてから、柳の腕を引いて耳元で一言。
「パンジーの花言葉も、同じだから」
 それだけ言って、腕を離す。
 離した途端に、抱き締められる。
「何があったのか、知らないけど。私の気持ちだから」
「ああ、ありがとうつばさ」
 そっと触れるだけのキスを交わして、抱き締めあう。
 穏やかな春の光を浴びながら、耳には終礼のチャイムが鳴り響く。

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