恵みの雨
 スッポリと腕の中に収まるつばさの髪を優しく撫でながら、外に視線を向ければ雨が降り始めている。
 今日の天気は、予報では晴れ。
 しかし、梅雨の始まりである現在。
 いつ雨が降っても、おかしくはない状況で。
「つばさ」
「う?」
 静かに名前を呼べば、きょとんとした表情で見上げて来る。
 大きな瞳は、何も知らない真っ直ぐな視線。
 そんなつばさに笑みを浮かべ、屈んでキスを1つ。
「!!」
 驚き、目を見開くつばさ。
 抱き寄せ、数回キスを落とせば。
「んぅ、」
 甘い声が漏れる。
 薄く開く唇に、舌をねじ込ませて竦む舌をゆっくりと引き出し、絡める。
「んっ…ぅん………」
 震える身体を、優しく撫でながらも。
 戸惑うつばさを、味わう。 
 角度を変え、繰り返す中で抱き付きながらも、ゆっくりと応じるつばさに、愛おしく感じる。
「…ふぁっ」
 軽く口付け離せば、甘い声を上げて倒れ込んで来る。
 その身体を抱き止めれば、顔を真っ赤にさせたつばさが見上げて来る。
 蒸気した頬に、潤んだ瞳。
 無防備すぎる姿は、保護欲を駆り立てると共に、穢したい欲望が渦巻く。
 何も知らないからこそ、好きなように教え込みたくなる。
「れんちゃ、どうしたの?」
「つばさ」
「ん?」
「欲しいのがあるんだ」
「ん?欲しい、の…」
「ああ、つばさが欲しい」
 耳元で囁くように告げれば、一瞬の間が空いた後に、真っ赤になったつばさが居た。
「貰っては、ダメか?」
「………だ、ダメじゃない………」
 顔を埋めボソボソと答えるつばさ。
 そんなつばさを抱き上げ、部室の一角にあるソファーへと移動する。
「愛してる、つばさ」
「!!」
 耳元で囁けば、真っ赤になりながらも小さな声で答える。
 外は、降り始めた雨。
 しかし、2人にはそれは恵みの雨となった。

[ 39/53 ]

TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -