ひまわり(木手)

 眩しい太陽のような、ひまわりのような笑顔でいつもにこにこしている。
 そんなキミに、何度救われて来たかキミは知らない。




 テニス部で、全国大会優勝という目標を掲げ。
 毎日厳しい練習に耐え続け、始まった地区予選。
 順当にコマを進め、勝ち上がって行くと。
 いつの間にか、「殺し屋」という名が付いてしまった。
 確かに、綺麗とはいえないテニスをしている。
 けれど、このメンバーでそして何よりも監督に優勝を贈りたかった。
 ただそれだけなのに、周囲の評価に押し潰されてしまいそうになる。
「えいしろー!」
 コートに立ち尽くし、自分を見失いかけると少し幼い声に呼ばれる。
 声の方を向けばいいコートの外で、手を一生懸命振って呼ぶ名前の姿。
「一体、どうしたんです?」
「んー、永四郎に差し入れ持って来たぬ。冷やしたゼリーだよ。くり食べて、余計な事や忘れて?永四郎ぬいい所は、わんがたくさん知ってます!永四郎をよく知らない言葉より、わんを信じてくださいよ」
 ゼリーが入っている保冷バックを押し付けられ、両手が塞がった俺の両頬を優しく包み込み柔らかな声で伝えてくれる。
 真っ直ぐに見詰めてくる瞳が、言葉に嘘偽りのないものだと伝える。
 どんよりとした気持ちを、吹き消してくれる。
「そうですね。他の誰よりも、名前の言葉を信じますよ。にふぇーでーびる」
「ふふ、どういたしましてです。ね、永四郎。覚えていてくださいね?私はいつだって、永四郎の味方だって事を」
「ええ、そうですね。にふぇーでーびる、名前」
 他の誰が何と言っていたとしても、たった一人の人が自分の事を分かってくれている。
 それ以上に心強い事は、何もない。
 いつだって、ひまわりのような明るい笑顔で照らしてくれる彼女に感謝を胸に。
 再びコートに立つ。



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