求婚の日(白石)

1月27日。
所謂、休日な日曜日。
その日は、前々から約束をしていた恋人である蔵とのデートの日。
大型ショッピングモールまで足を運んでの、デート。
歩く事を想定して、カジュアルな服装を選びながらも、可愛い小物を身に付ける。
美形の分類に入る蔵と並ぶと、どうしても周囲の視線が気になってしまう。
そうして身仕度を整え、時計に視線を向けると。
「わっ、もうこんな時間!?」
約束の時間が差し迫っていて、慌てて家を出る。
家の近くで、車を停めて待つ蔵に走り寄れば。
「おはようさん、名前。そないに走らんでも、大丈夫やで?」
「お、おはよう蔵」
息を整えながら挨拶を返せば、乱れた髪を直しながら優しい笑顔を向ける。
そんな蔵に、キュンとしながら遅れた事を詫びて車に乗る。
「最近、風邪が流行っとるけど。名前は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。蔵こそ、仕事忙しいんだから気を付けてね?」
「せやな〜…、引いたら看病してな?」
「移さないでよ〜?」
他愛ない話をしながら、目的地に向かい。
ショッピングモールに着けば、家具から始まり、食器やらと生活品を見て行く。
「蔵、引っ越しでもするの?」
「ん〜…、コレとコレならどっちがええ?」
「左かな?」
聞いてもはぐらかされてしまい、仕方ないので一緒に決めていく。
そうして、お昼を食べて他に足りないのはないか確認してからショッピングモールを後にする。
「アレ、蔵。コッチは違うんじゃない?」
「ええんや」
いつもと違う道を走っている事に気が付き、問えば笑って返される。
そうして、車が一つのマンションの駐車場に停まる。
そこは以前、蔵と見に来た事のあるマンション。
とても素敵でこんな所で生活出来たらなと、思い。せめて、展示ルームを見たいと蔵と、見に来た所。
「蔵?」
「コッチやで」
手を繋いで、迷いのない足取りでマンション内に入って行く。
セキュリティーの万全なマンションを通過して、エレベーターに乗り込む。
訳が分からないまま、最上階とまではいかないけれどそれなりの高さを誇る階数の一室に案内される。
「ねぇ、蔵どういう事?」
「まあ。すぐに分かるから、ちょっとコッチにおいで名前」
促されるままベランダに出れば、そこには青空が広がり。
雄大な街並みが視界に広がっている。
「うわぁ〜……」
「すごいやろ?気に入った?」
「うん。スゴイ素敵だね」
ベランダからのロケーションも、このマンションの売りの一つでありそれが、名前の惹かれた理由でもあった。
「ほなら、名前。俺と一緒に、此処で暮らさへん?」
「え?」
「ちゅうか、結婚してくれへん?此処で、新しい関係を俺と築いてくれへんか?」
「く、ら……?」
「あんな、今日って求婚の日やねん。せやから、その日にあやかるっちゅー訳でもないんやけど。どうせやったら、そんな日に求婚したかったねん」
真っ直ぐに見詰めてくる蔵に、言葉を失くし震える両手で口元を覆う。
堪えようにも、涙が溢れて蔵の顔が滲む。
「俺と結婚してくれへんか?名前」
「は、い」
「良かったー」
大きく息を吐き出し、ぎゅっと抱き締めてくれる蔵に身を預けてうれし涙を流す。
新しい関係は、此処から始まる。




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