朝の一コマ(財前)

一緒に暮らすようになって分かった事。
財前は、毎朝ワックスで髪を整えているという事。
その姿を見るのが、名前の密かな楽しみであり。
そして、その整えられた髪を崩したいと思っていたりもする。
中々踏み切れないでいたが、今がチャンスとばかりに名前はゆっくりと近付いて。
「どないしたん、名前」
「えへへ」
鏡に映り込んだ名前に気が付き、財前が鏡越しに名前へ視線を向ければ。
満面の笑みを浮かべて、名前は背伸びをして。
整えられた財前の髪に両手を伸ばして、ワシャワシャと掻き回して髪を崩す。
「ちょっぉ!何すんねん!!」
「えへ〜。やってみたかったんだ、一度」
悪びれもせずに、ご機嫌で歌うように言えば。
財前はムっとした表情を見せるものの、乱れた髪もそのままに。
自分よりも下にある小さな頭に手を伸ばして、綺麗に整えられた髪をワシャワシャと掻き乱す。
「ちょっ、光!何するのよ〜」
「名前が先にしたんやろ?」
「ぶー」
財前の言葉に頬を膨らませて抗議する名前に、笑う財前。
反撃されるとは、思ってもいなかったのだが。
膨れる名前の額にキスを一つ落として。
「イヤやったら、止めればええちゃうん?」
「だって、なんかやってみたかったんだもん」
「・・・・・・それなら、俺も同じやで」
「光は、ダメ〜」
「なんやねん、ソレ」
狭い洗面所で、笑い合う2人。
休みの日、2人で出掛ける為に準備をしており。
予定時間はもうすぐそこ。
「名前、直たるからちょい立ち」
「え〜、出来るの?」
「アホ、器用やで?任しとき」
名前を自分の前に立たせると、ブラシで丁寧に梳いて整えるだけでなく。
小さなお団子を作って、髪型を少しアレンジしてやる。
そうして、残った髪はそのまま流して完成。
「どや?」
「うわ〜、ありがとう光」
「どういたしましてや。ほな、お礼はコレでええで」
振り向かせてキスを一つ。
顔を赤くする名前に満足そうに笑むと、他の用意しとき。
髪整えたら出るで。
そう声を掛けて、やっと動き出す。
そんな日常の一コマ。




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