構って(財前)

その日は、久しぶりの休日。
学校は休み、部活も休み。
外は快晴、まさにデート日和。
名前は約束した通り、彼氏である財前光の元を訪れたが。
財前は、生返事を返すばかりで。
パソコンの前から、一向に動こうとしなかった。
「光〜」
「なんや」
「天気ええで?家に籠もっとらんで、外にでーへん?」
「行かん」
黙々と、曲でも作っているのか。
全くこちらを見ない。
それが、名前には面白くない。
せっかく久しぶりだからと、この日のために買った新しいワンピースも見向きもされず。
しかし、だからとこのままで終わらないのも名前だった。
財前の背後に近寄り、後ろから抱き付く。
「ちょっ、重いわ!」
「重いって、失礼や!」
「いいから、離れろ名前」
「い〜や〜や〜。構わへん、光が悪いんや」
言いながら、むぎゅと抱き付く。
そんな名前に溜め息を一つ。
財前は再びパソコンと向き合う。
そんな財前に、後ろから抱き付いたまま。
ありとあらゆる手を使って、構って貰おうとする名前。
そんな名前に、まんざらでもなさそうに笑みを浮かべたまま。
気が済むまで、好きにさせていたが。
名前の手が首筋を撫でた瞬間。
両手首を掴み、一気に立ち上がる。
「ひ、光?」
「構って欲しいやな?」
「え、えと…」
その瞳に宿る色に、困惑する名前。
そのまま近付く財前から、手首を掴まれたまま逃げようとして、ベッドに足がぶつかる。
「誘ったんわ、名前ッスわ」
口付け、問題無用で押し倒される。
「ひ、光!」
「そんな格好して来る名前が、悪いッスわ」
「え?」
「襲って下さい言うとるもんやろ?」
楽しそうに笑いながら、伸びた腕が………。

結局、夕方までタップリと構って貰えた。
但し、ベッドの上で。




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テーマ「人外ファンタジー」
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