王子様は、仮の姿(幸村)

巷では、王子様とか。
儚げとか言われているが。
その本性を知っている人間は、口を揃えて言う。
「神の子なんかじゃない、魔王だ」
と。
それは、間違ってないと思う。
付き合う切欠にしても、ほとんど幸村の強引なアプローチ・・・アプローチというよりも、気が付いたら先生を始め周囲が認知をしていたという手法により、彼女という座に就いていた。
アレは一体どんな技を使ったのか、未だに気になるんだよね。
「どうかしたのかい?」
「え?」
「上の空だけど」
にっこりと、それはそれは綺麗な笑みを浮かべて訪ねてくる。
訪ねて来るのはいいけれど、なんでこの男はココに居るんだろうか?
内心で首を傾げれば。
「フフ、不思議そうだね。そんなの決まっているじゃないか、自分の彼女が他の男と出掛けたと聞いて大人しくしていると思う?」
綺麗な笑みを浮かべ、訪ねて来るがその瞳が全然笑っていない。
「あ、あのね!」
「フフ、言い訳?聞いてあげるから、家に行こうか?」
どこまでも綺麗な笑みを浮かべ、腕を掴まれ拒否権がないままに連れて行かれる。
掴まれた腕が、痛い。
行きたかった映画の鑑賞券を貰えるという話で、一緒に軽い気持ちで行かなければ良かった。
部活で忙しい幸村に遠慮なんて、しなければ良かった。
まさに、後悔先に立たず。
「あの・・・幸村」
「何?」
冷ややかな声に、次の言葉を飲み込む。
そうして連れて行かれた家。
部屋に入った途端に、ベッドに押し倒される。
見上げる顔は、冷ややかな色を灯していた。
「じゃあ、言い訳を聞こうか?」
「ごめんなさい。映画、見に行ってたの」
「へぇ〜?」
「今週末まででさ、幸村は部活で忙しいでしょう?」
そう言えば、盛大な溜息が一つ。
「俺が行かないとでも?」
「ごめん」
「許さない。お仕置きが必要だよね?」
それはそれは、妖しい笑みを浮かべてとても楽しそうに言う。
いつの間にか、ネクタイで両手首を束ねられ。
さらには、外されたネクタイで目隠しされてしまい。
「ちょっ、ま、幸村?!」
「精市」
耳元で低く囁かれる。
その声に、ゾクリと身体が震える。
「いい加減、名前で呼んでくれないかな」
「せ、精市」
「よく出来ました。でも、それとコレは別だから」
「やっ!!」
「さすがに、俺も。本当に五感を奪うのは気が引けるからね、コレで許してあげるよ」
とても楽しそうに言う幸村に、背筋が凍る。
そこからは、言葉にするのも赤面モノな。
結局、帰る事が出来ずに泊まるハメになってしまい。
「今週末は、映画に行こうか」
「ん」
それでも、そんな言葉に許してしまう。
それもこれも、全ては好きだから。
そう、本当は幸村に一目惚れをしていたのだ。
それを望みがないと諦めた。
その手を掴んでくれたのは、他でもない幸村。
例え魔王と言われようと、好きなのだから許してしまう。
「大好き、精市」
「俺も好きだよ、じゃあ、もう一度確認しようか?」
サラリと笑顔で告げられ、固まったのは言うまでもない。





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