聞きたいのは(日吉)

「うーん。ここまでしても、ダメってどう思う?」
「せやなー、案外日吉はヘタレちゃうん?」
「クソクソ。日吉のクセして、名前に此処までさせておいて」
忍足と向日の言葉に、思わず名前は溜息を吐く。
そうではないかと思って居た事を、他人に言われると認識を改めざるを得なくなる。
違うと思いたくても、思えなくなるというか。
「実は何とも思われてない、とか……」
「それはないですよ。安心して下さい、名前先輩」
「いやにハッキリと断言するな、長太郎」
「日吉が名前先輩を想ってる事は、間違いないですよ。宍戸先輩、何度か睨まれてたじゃないですか」
「おー、そう言えばそうだったな」
鳳の言葉に、何かを思い出したのか宍戸は頷く。
そんな2人のやり取りを頭上で聞きながら、名前はテーブルに突っ伏す。
跡部と同じクラスという事もあって、一目惚れをした日吉が偶然にも同じ部活で後輩というので、跡部に無理やりお願いして知り合った。
少なからず、向こうもそれなりに好意を向けてくれているとは思うのだが。
今一つ発展しない。
此方からいくらか歩み寄り、それとなく信号を送るのだが。
それに応じようとするものの、結局は不発に終わる。
そんな事が続いていた。
「アーン?んなもん、テメェが自分から言えばいいんじゃねーの」
何を言ってるんだとばかりに、跡部が名前の頭をポンっと軽く叩く。
「そうなんだけどー、やっぱり言って欲しいー」
「だったら、精々頑張るんだなー名前ちゃん」
ニヤニヤと笑いながら、何が楽しいのかそのまま髪を弄んだり撫でたりとする跡部。
真意を測りかねるが、不快ではないのでそのままにしていると。
カフェテリアにやって来た日吉が、真っ直ぐに歩いて来るが。机に突っ伏したままの名前には、その姿が見えず。
周囲に居た跡部を始めとした面々は、面白そうに笑って日吉を見ている。
相変わらず、跡部の手は名前の頭に触れたままだ。
「先輩、ちょっと付き合って下さい」
予想もしてない日吉の出現と、それまでにない強引な行動に驚き目を白黒にさせながらも掴まれた腕をそのままに、勢い良く立ち上がりカフェテリアを後にする。
出入り口付近で振り返ると、跡部を始めとして全員が笑い乍手を振っていた。



カフェテリアを後にして、日吉に連れて来られたのは人気のない校舎裏。
「ひ、日吉?」
突然立ち止まり、驚いて声を掛けると。
慌てて手を離して。
「す、すみません」
狼狽えて、このままだと今までと同じく謝って行ってしまう。
そう思った名前は、日吉の両手を掴んで真っ直ぐに視線を向ける。
「名前先輩?」
「あのね、日吉」
「は、い……」
「日吉は、私の事どう思ってる?」
静かに、ずっと聞きたかった事を口にする。
本当はこんな形ではなく、聞きたかったのだが仕方がない。
何時までも拉致の明かない状況は、耐えられない。
「え?ど、どうと言うのは……」
「私は、日吉が好きだよ。付き合って欲しいって、思うの」
視線を逸らさずに自分の想いを真っ直ぐに告げる。
そんな名前の視線を受け、暫く視線を彷徨わせていたが。
「すみません」
「え?」
「本当なら、俺がちゃんと言うべきですよね。……名前先輩、好きです。付き合ってくれませんか?」
耳まで真っ赤にして、やっと聴けた言葉。
嬉しくなって返事と共に、抱き付けば驚きの声を上げる日吉。
例えヘタレであろうとも、名前にとっては一番大切な人である事には変わりはない。




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