そんな事(跡部)

天は二物を与えないと言うが。
「アレって絶対に嘘だよね?」
「突然一体何だ」
優雅に紅茶を飲みながら、突然の言葉に眉間に皺を寄せるも。その表情すら美しいというのは、一体どういう事なのか。
内心溜息を吐きながらも、名前は自分が放った言葉に付いて補足をする。
「よくさ、天は二物を与えないって言うけど。アレって絶対に嘘だと思うんだよね」
「アーン?それが一体なんだ」
「今、私の目の前に居る人を見て思ったんです。跡部って、手に入らないモノなんて、何もないでしょう」
有り得ないとばかりに首を横に振りながら、甘さ控えめのマフィンを一口食べる。
専任のパティシエが作ったというマフィンは、程よい甘さでシットリとしていて美味しい。
一般家庭に専任のパティシエが居る事自体、有り得ない。
跡部景吾という男は、手に入らないモノは何もないと言っても過言ではない程にあらゆるモノを手にしている。
それが例え親の財力だとしても、だ。
所謂お坊ちゃんで、見た目も美形と称するに値する見目麗しさ。
頭も良く、運動も出来る。性格は尊大で俺様ではあるが、見るべき所はちゃんと見ているのだ。
だからこそ、人望があるのであろう。そうでなければ、あの人数の部員を纏める事は出来ない。
「ハッ、そんな事か」
「そんな事って……」
「何か勘違いしてんじゃねーか?俺様にだって、まま鳴らないモノぐらいあるぜ?」
跡部の言葉に、即座に「嘘だ」と反論をするが。
ニヤリと跡部は笑うと、腕を伸ばして来てゆっくりと頬を撫でて来る。
「何時までも、跡部って苗字で呼びやがる名前の心とか、なぁ?」
「あ……」
「何回言えば気が済むんだ、アーン?名前で呼びやがれ」
「ええっと、それについてはまた今度で」
思わずシドロモドロになるが。
当然の如く、跡部さまが赦してくれる筈もなく。
名前は、その日跡部の名前を呼ぶまで跡部から離される事はなかったとか。





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