冬(白石)

立冬を過ぎてから、朝夕に限らず冷え込むようになった。
外に出るのは億劫で仕方ないのだが。
体育となれば、否応なしに外に出ないといけない時があり。
まさに、その日は外での授業であった。
「あ…うそ…」
着替えを終え、最後に長袖のジャージを羽織ろうとして名前の手は止まる。
ある筈のジャージがない。
持って来たつもりでいたジャージは、どうやらつもりだったらしく。
忘れてしまったらしい。
「誰かジャージ持ってないよね〜?」
「忘れたの?」
「みたい」
「ごめん、持ってないわ」
やはり、誰も持っておらず。
サボりたくなる衝動に駆られながら、半袖の姿で外に出る。
「うっ…帰ってもいいですか?」
「いいけど、後が面倒だよ〜?」
友人の言葉に、両腕をさすりながら歩いていれば。
「なんや、名前。ジャージ忘れたんか?」
「白石…」
後ろから声を掛けられ振り向けば、爽やかな笑顔の白石が立っていた。
ジャージなのが恨めしく、思わず名前が見つめれば。
苦笑しながらジャージを脱ぎ、きょとんとする名前に放り投げる。
「え?」
「着とき。風邪引いたら大変やろ」
「え、でも…」
「俺なら、鍛えとるから平気やねん」
それだけ言うと、サッサと行ってしまう。
ほんのり残った温もりに、袖を通しながら頬が紅くなるのは、寒さのせいか。




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