ある夏の日(日吉)

暑い日射しの中、汗を拭いながら向かう先は突然の呼び出しメールを送って来た日吉の家。
この暑さに、さすがに運動をするのは禁止になったという事で部活が休みになったのでどうせ暇だろうと、家に呼ばれたのがほんの数十分前。
確かに特段する事もなく、自室でのんびりと寛いでいたけれど。
呼ばれて嬉しいのだけれど、何となく悔しさが混じるのはどうしてなのか。
そんな事を考えながら、慣れた道を歩いて日吉の家に辿り着く。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
出迎えてくれた日吉は、珍しくも作務衣姿。
和装なのは珍しくはないが、作務衣なのは珍しい気がする。
「何だ?」
「ううん、若が作務衣って珍しいなって」
「そうか?」
淡々と返し、先に部屋に言ってるようにと告げて来る日吉に頷き。
名前は慣れた足取りで、エアコンの効いた室内に入る。
外の暑さと隔絶された室内に、ホッと息を吐く。
綺麗に整頓された室内の片隅に鞄を置いて、適当に座るとお茶を持って日吉が入って来る。
「ちょうど、帰って来る前に借りられたんだ。一緒に観ようと思ってな」
嬉々とした表情で取り出す一枚のDVDに名前の顔が、引き攣る。
ホラーが大好きな日吉に対して、名前は嫌いと正反対にも関わらず。
日吉は事あるごとに借りて来ては、名前を呼んで一緒に観る。
「そういえば、今日は本当にあった怖い話の日だな。観て行くだろう?」
「え?」
「楽しみだな」
引き攣る名前に気が付かず、滅多に見れない嬉しそうな表情で日吉は言う。
座る名前の後ろから抱き締めて、DVDを再生させて会話は強制終了。
それでも、結局のところは最後まで観た事のない2人の時間が始まる。
外では、蝉が鳴いている夏の日。





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