夏祭り(財前)

夏といえば、やはり夏祭りという人が多いであろう。
名前も当然のように、夏祭りを楽しみにしていた。
今年は恋人である財前と行きたいと思い、その為にいつもと違う雰囲気を醸し出そうと少し大人びた柄を選び、新調したのだ。
夏祭りの誘いをして、了承の返事を貰ったので。
浴衣を着て、財前の家へ。
迎えに行くと、予めメールをしておいた。
誰よりも一番最初に、財前に見て欲しくて。
財前の家に辿り着くと、ちょうど家族全員が外出するとの事で、上がらせて貰う事に。
慣れた足取りで、部屋に向かう。
「光〜、迎えに来たで?早ぅ、行こう?」
ドアをノックして、開けながら言えば。
椅子ごと振り向く財前と目が合う。
少し不機嫌そうな表情をしながら、名前の姿に一瞬目を見開く。
「光?どないしたん?」
同じように、浴衣に身を包んだ財前にドキマギしながら名前は、部屋の中に入る。
「気が変わった」
「え?」
「夏祭りには、行かへんって言うたんッスわ」
「な、なんで?」
「なんで?そんなん決まってるやんか」
音もなく近寄り、気が付けば名前はドアを背にしていた。
目の前には、獰猛な笑みを浮かべた財前。
後ろは、ドア。
横に逃げようとした瞬間、ドンっと勢いよく両腕が逃げ道を塞ぐ。
「なぁ、名前」
「な・・・に?」
「何で、今。逃げようとしたん?めっちゃ、傷付いたっすわ」
全然傷付いたという顔をしていないのに、そんな事をサラリと告げる。
「えっと・・・」
二の句が告げずに戸惑っていると。
一体、目の前に居る男は誰だろうか?
そう思ってしまうぐらいに、蠱惑的な笑みを浮かべると。
「名前があかんねん。そんな恰好して、他の男でも誘惑するつもりッスか?」
「え?」
「可愛いすぎやねん」
最後の言葉は、そっぽを向きながら小声でも。
シッカリと名前の耳には、届いた。
「光!!」
思わず、嬉しくなって抱き付けば。
驚いた表情をしながらも、シッカリと抱き止める財前。
「この恰好、誰よりも一番に光に見せたくって。だから、光の家に来たんだよ?」
「なら、夏祭りは行かへんでもええよな?」
「え?」
「俺に一番って、言うたやん?せやけど、階下でおかん達と会うたやろ?安心してええで?おかん達は、明日の夜まで帰って来ぃへんから」
にっこり笑って、掠めるようにキスを一つ。
驚く名前を問答無用で抱き上げ。
「嘘付いたんやから、罰が必要やんな?」
「ちょっ、光?!!」
ベッドまで連れて行かれてしまえば、いつもと違う姿の財前に見下ろされ。
抵抗する気力もなくして、大人しく甘美な罰を受ける事にする。
もとより、抵抗する気などどこにもないのかもしれないが。





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