4.始まりの夢

夜空に浮かぶ月が、日に日に満月へと近付いて行く。
つばさは、日課のように貰ったポプリを月明かりの元で照らしてから枕元に置いて眠りに就くようになった。
そうしてある晩、不思議な夢を見た。
仄かな灯りが照らす、冷たく暗い石造りの廊下。
音がなく静かな場所。
そうして、ひんやりとした中をゆっくりと歩く内に嬌声が耳に届く。
そこで、起きる。
「何、今の?」
目を覚まし、ベッドから身を起して首を傾げる。
何ともなしに、夜空を見上げれば澄んだ綺麗な星空に眩く輝く月がある。
再びベッドに潜り込み、眠りに就けば再び同じ夢を見る。
室内のドアの前まで辿り着き、ドアを開けるのに躊躇していると朝を迎える。
「変な夢」
息をゆっくり吐きながら呟き、制服に着替えて学校へ行く支度をする。
そうして1日を過ごす内に、朝の夢などスッカリと忘れてしまう。
再び夜になり、眠る前に喉が渇いている事に気が付いて、水を飲んでから就寝。
同じように、夢を見る。
「一体、何なの?」
呟く声は、反響して返ってくる。
喉の渇きを感じ、眉間に皺を寄せる。
寝る前に飲んだのに、夢の中ですら渇きを覚えるとは、どれだけ喉が渇いているのか。
そう思いながら、そこで意識は途絶える。
気が付けば朝を迎えていて、喉の渇きはない。
更にいうなら、身体が軽く感じる違和感。
首を傾げるものの、階下から起床を促す母親の声により思考は一時中断。
不思議に思いながらも、1日を始める。



暗く静かな室内で、ベッドに気怠げに凭れ掛かる蓮二は、満足そうに笑う。
緩やかに、けれど確実に変化していく状況に。

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