-6-

約束の日まで、あと2日。
距離を置こうと柳が言ってから、つばさからのメールも電話もない。
付き合うようになってから、朝は電話を掛けて起こしながら、ほんの少しだけ話をして。
夜は夜で、寝る前に電話をして。
その前には、メールをやり取りしたりと繋がっていた事に、柳は気が付く。
日が浅いながらに、こんなにも繋がっていた事に驚く。
終業式間近なだけに、午前で授業は終わり。昼を取った後には、部活。
避けているのか、あんなに会っていたつばさとは、スレ違う事もなく時間だけが過ぎて行き、距離を置けば置くほどに気になってしまっている。
考えようにも、データが通用しない。
結果としては、同じ事を繰り返すだけ。
「柳ってキミだよな?」
そんな時、部活を終えて校門を出た所で声を掛けられる。
「突然悪いんだけど、ちょっと付き合ってくれないか?移動したら、名乗る。ココに長居出来ないんだよ」
早口で捲し立てる、高等部の制服を着た少年に、頷く。
相手が誰であれ、特段予定はないので柳は案内されるままに移動をする。
駅とは反対方向に歩いて行き、着いた場所は趣のある喫茶店。
中に入ると、温かな光に耳に心地好い音楽が迎えてくれる。
「蒼空」
「待たせた?」
「いや、大丈夫だ」
奥の席には、もう一人。
私服で大学生ぐらいの、青年。
向かいの席を示され、座ると。
「いきなりでごめんな?俺は、如月蒼空。こっちは、大地」
「如月……」
「そう、つばさの兄です。ウチの妹が色々とやらかして、申し訳ない」
いきなり頭を下げられ、驚く柳に蒼空の隣りに座るもう1人の兄である大地は、興味なさそうに珈琲を飲んでいる。
「ちょっ、大地ってば!何、関係ないってスタイルなんだよ」
「関係ないだろう?俺にも、お前にも。どんな事情であれ、他人の恋愛事に首を出すな」
淡々とした口調でいう大地に、口を閉じるしかない蒼空。
大地はカップを置くと、静かに口を再度開く。
「詳しい話は、俺は知らん。興味なんてないからな、蒼空と違って。ただ、つばさはウソは付かない。アイツにとって、嫌いな人間に時間を割く事もましてや、興味ない奴に時間を割くなんて絶対にしない。難儀な性格してるが、根本は素直で甘えたがりだ」
それだけを言うと、先に帰ると告げて大地は帰って行った。
残された柳は、黙って考え込み蒼空は何も言わずに口を付けてなかった珈琲を飲む。
恐らく、大地とつばさは仲がいい訳でも悪い訳でもないのだろう。つばさにとって、珈琲を飲んでいる蒼空の方が親しいのは、性格の問題であり、大地とつばさは似ているからこそ適度な距離を保っているであろうと、予想が付く。
だからこそ、大地の言葉に偽りはなく事実であると信じられる。
あとは、柳自身が答えを出すだけ。
「こんな事、俺が言うべきじゃないんだろうけど。つばさが誰かを好きになったのは、初めてなんだよ。大変だろうけど、キミなら妹を任せる事が出来るって思う」
真っ直ぐな視線と言葉は、蒼空の素直な性格を表していた。
柳は答える事はしなかったが、蒼空も聞くことはせず、静かに店を出て別れた。
答えは、見付けられた。


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