-4-

柳が生徒会室を訪れると、室内には生徒会長の羽村柚月と志野陸斗の2人だけ。
「ごめんね、柳。突然呼び出して」
「いえ」
「あ、紹介するわね。こっちは……」
「志野陸斗、1年A組8番」
「それってさ、つーに聞いたんだよな?」
柳とあまり変わらない身長の生徒、志野陸斗は確認するような体裁ながらも、疑いのない問い掛け。
「……一体、何の用ですか」
「そうね、柳がつばさの恋人かの確認がしたかった。ってのと、あの子が選んだキミに生徒会役員としてでなく、興味が湧いた」
椅子に座ったまま、楽しそうに笑って言う柚月に、柳は静かに見つめる。
6月も終わる頃、柳とつばさの関係が噂になり、周囲に知られる事になった。
そうなると隠す必要もないだろうと、校内でも一緒に居るようになり、噂を肯定する形となった。
「先輩との関係が知られるようになって、つーに呼び出しが掛かったのは、5回」
「その全てを、つばさはあしらったけど」
「知ってましたか?というか、何処まで知ってますか?」
柚月と陸斗、2人が交互に話す内容を柳はただ静かに聞いていた。
コレまでに、呼び出しをされていた事も初耳であり、それをあしらった事も初耳。
名前で呼ぶが、丁寧な口調は崩さないつばさに、柳は不安を感じていた。
甘える事はあっても、どこか一線を引かれている。
「つばさはね、見た目は幼いし身内には甘えるわ。けど、キミの事は誰にも話してないのよね。私達だけでなく、陸斗に麻緋にすらも」
「麻緋?」
初めて聞く名前に、首を傾げると。
そんな柳に、「つーにとって、1番の親友」と答える陸斗。
「ま、つーが何を考えてるかはいいんだ。俺には、分かるからな」
ニッと笑って言う陸斗に、柳は嫉妬を抱く。
本当に、考えてる事を分かっているのか、確かめる術はない。
だけれど、今の柳にはどんなデータをもってしても、分からない。
「陸斗は分かっているだろうけどね」
「つーが秘密にしてるのは、楽しんでるだけだ。秘めやかなる付き合い、それをな。麻緋は知らないが、知ってる。話はしてないが、気が付いてるし、つーも分かっている」
柚月が溜め息を吐くと、陸斗は淡々とした口調で話出す。
語られる内容を静かに聞きながら、柳は納得をする。
確かに、楽しんでいそうだと。
「先輩に対しては、本当に聞いてくれ。なあ、つー?」
陸斗は、笑って言いながら柚月の後ろ。
窓を開けると、そこにしゃがんで隠れていたつばさに声を掛ける。
「相変わらずだよね、陸」
「あ?」
「何でもな〜い。ヨッと!」
軽口を叩きながら、窓枠に手を付くと軽々と窓枠に上がり、座る。
「あ〜あ、ツマンナイの。何でバラすのかな〜?」
足をプラプラさせながら、つばさは頬を膨らませる。
それは、子供じみた行動で年相応な姿。
「それにさ、噂だって流したのは陸でしょ?指示したのは、柚月姉だよね」
「アラ、知ってたの?」
「当たり前だし。不自然なタイミングだし、辿れば陸で、陸が単独でする筈ないもん。それこそ、私に喧嘩売るのを承知で逆らえない相手なんて、柚月姉か黎兄ぐらいじゃん」
ムスッとしながら、答えるつばさに肩を竦める陸斗に苦笑いする柚月。
そんな2人を見てから、柳に視線を向けると緩く首を傾げ、困ったような表情で笑い掛ける。
「ちなみに、麻緋ちゃんなら言わなくても分かっているし。秘めやかなる恋ってのが、楽しかったのにな〜…。煩わしいのもないし」
「煩わしいって、容赦なく叩いてただろうが」
つばさの言葉に、呆れた声で陸斗が言えばきょとんとした表情で、つばさは不思議そうに。
「先に、喧嘩を吹っ掛けて来たのは向こうよ?売られた喧嘩は買うし、2度と刃向かわないように、1度で叩くのは当たり前じゃない」
何を言っているんだとばかりに、つばさは言う。
そんなつばさに、陸斗は呆れ柚月も笑う。
「本当に、つばさは黎に似たというか、教え込まれたわよね」
「そう?……蓮二、一緒に帰ろう」
「あ、ああ」
「先に帰るね〜」
ヒラリと手を振ると、窓から降りて校門に向かって歩き出す。
柳も柚月に挨拶をすると、生徒会室を後にして校門へと向かう。



[*prev] [next#]

[ 戻る ]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -