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柳と付き合うようになり、二人の関係が周囲に広がったかといえば、広がる事はなく。
相変わらず、密やかな付き合いを続けていた。
休みの日、部活が終わる頃になればつばさは柳の家を訪れて、静かに時間を過ごす。
データ整理等に忙しく、同じ部屋で過ごすだけの時もあるが、特段不服を述べる事はないままにつばさは、過ごす。
「そう言えば、つばさ」
「ん?」
「昨日、一緒に帰ってたのは誰だ?」
机に向かい、データを整理しながら柳が問えば、本から顔を上げると。
「気になる?」
「仲が良さそうだったしな」
「教えてあげてもいいですよ?ただし、教えるには……」
柳に笑い掛け、途中で言葉を止めると。
振り向く柳に向かって、両手を伸ばす。
その意味が何かは、この短い付き合いで柳は覚えて、1つ頷き椅子から立ち上がりつばさに近寄ると抱き上げてベッドに座り、自分の膝につばさを座らせる。
「幼馴染みですよ」
「幼馴染み?」
「そう。幼馴染みであって、それ以上でもそれ以下でもないです。敢えて言うならば、親友若しくは相棒でもいいですけど」
頷き答え、つばさは笑う。
そんな答えを聞き、柳はつばさを抱き締める。
「陸斗っていうんですけど、陸斗には一つ下の彼女が居ますよ?まあ、私にとっても陸斗にとっても私達の関係は決して、恋仲になるようなモノではないですけど」
「どういう意味だ?」
「恋仲になると、別れるかもしれないという可能性があるじゃないですか。私達にとって、そんなのは有り得ないんですよ。というよりも、恋とか愛とかそんなものじゃないんです。お互いを誰よりも深く理解しているが故に、です」
「それは……」
「嫉妬します?……私も陸斗も、お互いを異性とは見てません。それは、此れまでも今もこれからも変わる事はないんです。一緒に寝ても、何をしても絶対に間違いなんて起こりません。だって、何も感じないから。分かりますか?私は、今こうして蓮二に抱き締められてドキドキしてます。嫉妬されていて、嬉しいと感じてます。でも、陸斗だとないんですよ。理解出来なくてもいいです、嫉妬してもいいです、束縛してもいいですよ」
にっこりと微笑み、柳の頬を撫でながら言うつばさの表情はとても中学生とは思えない「女」を感じさせる。
学校で見せる顔とも違う、家族に見せるのでもなく。
それは、まさしく柳しか見る事のない「狡猾な女」の表情だった。
「つばさは、何を望んでいるんだ?」
「そうですね、蓮二に誰よりも一番近くに居る事です」
「もっとか?」
「ええ、もっとですよ?」
笑いながら、抱き付き笑う。
そんなつばさの髪を撫でながら、苦笑するしかない柳はデータ通りにいかないこの状況を密かに楽しんでいた。
データで知る事の出来るつばさと、実際のつばさは予想出来る部分と予想出来ない部分が多分にあった。
「私は、誰かと付き合う事に興味なかったんです。ですが、蓮二は別です。私の心を揺さぶりました」
「ふむ。俺の何かが良かったか?」
「蓮二ではなくては、ダメだったんですよ」
それ以上は、秘密ですと唇に指を当て笑う。
そんなつばさに、柳は苦笑する。
近くに居ながら、どこか遠くに居るつばさに興味深く惹かれる。
柳にとって、つばさは不思議な少女であった。


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