4.「俺が知らないわけないだろう」


それまでは、言葉だけで済んでいたやっかみが。
酷くなったのは、一体何が原因だったのか。
保健室に運ばれたと聞いた柳は、廊下を走った。
手当てをされたつばさは、柳の顔を見た瞬間に困り顔で笑った。
「つばさ」
「や〜、足を踏み外しちゃった〜」
恥ずかしそうに笑うつばさに、近付く。
保険医は、気を利かせてくれたのか。
そっと出て行く。
頬に、腕。足と擦過傷が、いくつも付いている。
そっと抱き締めれば、驚きの声を上げるつばさ。
「ちょっ、蓮二?!」
「俺が知らないわけないだろう」
柳の言葉に、声を失う。
震える手はさ迷い、柳の背におずおずと回される。
その小さな手を感じながら、柳は抱き締めたつばさの髪を背をそっと撫でる。
慈しむように、労わるように。
そうして、仄暗い想いが柳に宿る。

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