14.決断

蓮二に連れて来られたのは、大きな和風造りの家。
中に通され、真っ直ぐ廊下を進む。
そうして、突き当りにある扉を開けると。
そこには夢で見た、廊下が現れた。
「え?な・・・んで・・・・・・」
「つばさの夢は、俺が此処へと招いたモノだ。夢であり、夢ではない。だから、翌朝に疲れが残ってしまった。すまないな、どうしても必要だったんだ」
驚くつばさの手を引きながら、静かな声が答える。
そうして、いつだったかお茶をした庭園へと出る。
あの時と同じように、テーブルと椅子が用意されておりそこへ座るように促される。
違うのは、空に浮かぶのが月ではなく太陽だという事。
「さて、何から話そうか」
「さっきの人達は、誰なの?」
「ああ。アレは、一族の人間だ」
「一族?」
「そうだ。俺は、純潔種の吸血鬼だ純潔の吸血鬼は、数がかなり減ってしまっている。故に花嫁は、人の子を迎えているのだがな。それを未だに、心良く思わない者が居てな。困った事だ」
サラリと告げ、溜息を吐く蓮二につばさは驚く。
吸血鬼という事。
それは、人ではないという事で。
しかし、目の前の蓮二はつばさから見て人間にしか見えず。
何よりも、太陽が弱いのではないのか。そう思って尋ねると、アッサリとそんな事はないと返される。
「そうだな。つばさ、約束を覚えているか?」
「約束?」
「そうだ。14の時、発作を起こして倒れただろう?」
蓮二の問いに、コクリと頷いて答える。
「俺は、純潔種の吸血鬼であり。一族を率いる長でもある。尤も、正式には長の候補ではあるが。長として認められるには、一つ条件があるんだ。その条件が、花嫁を迎えるという事。そして、その花嫁として俺が選んだのはつばさだよ」
「わ、たし・・・?」
「そうだ。あの、発作を起こした時。つばさを助けたのは、俺だ。助けたと言っても、あの時点でつばさは手の施しようのない状態であった。だから、つばさに選択肢を迫った」
「選択肢」
「このまま、死ぬか。それとも、俺の花嫁となるか。花嫁となる事を了承すれば、俺と同じ吸血鬼として迎えられる。それは即ち、死ぬ事はない」
「えっ・・・」
「そうして、つばさは選んだ。花嫁となる事を」
「ウソ・・・」
「その証拠が、首筋の紅い華だ。最初は蕾であっただろう?16の誕生日と共に、華が咲くようになっている」
「ウソよ、私・・・そんな記憶ないもの・・・」
「ないと?本当に、そう言えるのか?」
蓮二の説明に、つばさは首を振って訴えるが。
そんなつばさを蓮二は、静かに見つめる。
真っ直ぐに見詰めて来る、夜を映したような瞳。
その瞳に吸い込まれるように、つばさの意識は遠退いていく。
あの、14の夏へ。
倒れた時、このまま死んでしまうと悟った。
死にたくなんてなかった。
まだ、死にたくない。
だから、差し出された手を掴んだ。
「貴方の花嫁になる」
そう、答えた。
それを思い出すと、一気に現実に引き戻され。
「連日の、行方不明の件だが。アレは、つばさが引き起こしている。自覚のないまま、飢えた喉を潤す為に引き起こしていたんだ。求めていたのは、俺の血なんだがな。彼女たちを選んだのは、その前に俺との事で何かあったのであろう?」
「知って?」
「ああ、知っている。なるべく飢えないように、夢の中で与えてはいたんだが。どうしても、不充分になってしまう。だから、彼女たちから貰っていたんだ」
「そんな・・・・・・」
「彼女たちなら、ちゃんと保護をしている。しかし、このままでは血に飢えた化け物になってしまうがな」
「どうすれば?」
「吸われたのは、一度きり。それもつばさによるものだからな、完全な吸血行為とは言えない」
蓮二の言葉をつばさは、黙って聞く。
「つばさが俺の花嫁となるのであれば、彼女たちは帰そう。いや、彼女たちに限らず、花嫁にならないのなら死ぬしかない。元々、つばさの今の命があるのは、俺が血を分け与えたからだからな」
「そ、んな・・・」
「再度、選択を迫ろう。俺の花嫁となるか?それとも・・・」
突き付けられる現実に、つばさは言葉を失う。
どちらかを、選べと。
それは、裏を返せば「生」か「死」か。
つばさは、選択の決断を迫られた。

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