13.知りたい事は

何時の間に眠ってしまっていたのか、フッと目が覚めた。
そうして、気が付く。
外に居る事。
そうして、もう一つ。
先日、蓮二の関係を問うて来た少女の首筋に牙を立てていた。
口内には、ヌメリとした感触。
血の味が、した。
瞬間、つばさは絶叫をすると再び意識を飛ばした。
「おっと」
倒れるつばさを抱き止め、蓮二は抱き上げ歩き出す。
その後ろでは、少女が真田に抱き上げられて運ばれて行く。
「目覚めの刻が来たようだな、つばさ。約束を果たして貰うぞ?」
眠るつばさに静かに告げ、額に口付ける。
そうして、誰に咎められる事なくつばさをベッドに寝かせる。
枕元には、プレゼントをしたポプリ。
「充分、役割を果たしてくれたようだな」
ポプリに口付け、蓮二は姿を消す。
ベッドには、夢も見ずに眠り続けるつばさ。
夜空に浮かぶ月は、満月に近い。


そうして朝を迎え、つばさはゆっくりと起きると、室内を見回す。
何の代わり映えのない、自分の部屋。
アレは、夢だった。
そう思い、ベッドを出たつばさは何気なく鏡に自身を映し、目にする。
シャツには、血の染み。
口端にも、血の跡。
その事に言葉を失う。
叫びそうになる自分を何とか堪え、急いで制服に着替えるとシャツを袋に入れて、厳重に封をしてゴミ箱へ。
洗面所に駆け込むと、何度も顔を洗い血を流す。
そうして、血を洗い流すとリビングへ。
「おはよう、父さんに母さん」
「おはよう、つばさ。誕生日おめでとう」
「あ………」
「なぁに、忘れてたの?」
父親の言葉に、つばさは今日が誕生日だという事を思い出す。
席に着き、朝食を取りながら何気なく視線をテレビに向けると。
行方不明の少女がまた出たと、伝えていた。
昨夜から戻らないと、連日の件を含め早めの段階に捜索願いが出された事などが、アナウンサーは読み上げている。
母親の怖いわね、等という言葉は耳に入らない。
テレビに映し出された、少女の写真。
それは、そこに映る少女は、間違いなく。
つばさが夢で見た、蓮二との関係を問うて来た少女。
その事に、つばさは箸を落とす。
これまで、不明になった少女は全員が蓮二との事について、触れて来た。
そうして、翌日には姿を消して今なお見つからない。
それは、つばさが気が付かない間に、彼女たちに何かをしてしまっている。という事なのか。
ドンドン顔色を失くすつばさに、両親は声を掛けるがつばさは答えにならない答えを返して、家を出る。
何が起きているのか、分からない事だらけで。
どうすればいいのかつばさは分からなかった。
フラフラとした足取りで、老紳士と出会った公園まで来るとベンチに座り込む。
グルグルと回る頭。
自分は一体、何をしてしまったのか。
「お前が、花嫁か?」
「え?」
突如声を掛けられ、驚いて顔を上げれば。
そこには、見た事のない男が3人程立っていた。
「あの男に、花嫁を迎えられたら困るんだ」
「アンタに恨みはないが、死んで貰わないと困るんだ」
「悪いな」
口々に言われ、その言葉を理解すると同時に男たちが襲い掛かって来る。
ベンチに座ったままのつばさに、逃げ場はない。
一体、どうしてこんな事になってしまったのか。
つばさは、恐怖に震えながら目を閉じる。
目を閉じて覚悟を決めた瞬間、首筋が熱くなるのを感じる。
感じた瞬間、後ろには人の気配。
「我が花嫁に、何か用か?場合によっては、俺が相手をするが」
「チッ」
男たちは、現れた人物に舌打ちをすると散り散りに走り去って行った。
つばさの後ろに立つ人物の脳に直接響く、声。
−どうしますか?
−始末しておけ
声に答えると、ゆっくりとベンチの後ろから前へと移動をする。
「大丈夫か?」
「どうし・・・て?」
「迎えが遅くなって済まない。全てを話そう」
現れたのは、つばさの隣席で友人である蓮二。
驚くつばさに手を差し出し、促される。
躊躇うモノの、つばさはその手を取った。
全てを知る為に。

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