12.紅い華、優しさ

つばさは、悶々としていた。
蓮二との関係を問うて来た少女が、翌日から事あるごとに、蓮二の周囲に姿を見せては話し掛ける。
友人と答えたが、本当にそれでいいのか。
間違いなく、友人ではあるが。自分は、それでいいのか。
考えれば考えるほど、分からなくなる。
見つからない答え、出口のない迷路。
夢を見なくなった代わりに、つばさは考えるようになった。
そんなつばさに、桃子は問い質す事は一切せずに普段通り接してくれていた。
その日は、1人で帰る事になった。
桃子は、用事があると先に帰宅。
蓮二を待っても良かったのだが、少女がテニスコート付近に居るのを見て、1人で帰る事にした。
近くの公園に、何となく寄って行くと。
「明るいとはいえ、この辺りをお嬢さんが1人歩くのは危険ですよ」
「え?」
突然、声を掛けられ振り向けば。
そこには、1人の老紳士。
「早く目覚めなさい。さもなければ、犠牲者は増えるだけですよ、我が主が定めし花嫁」
「花嫁って、何ですか?」
「忘れて………。主は一体何をしておられるのか」
老紳士の意味不明な言葉に、つばさは身の危険を感じ。
「人違いじゃないですか?失礼します」
そう告げて、身を翻そうとすると。
静かな声が届く。
「紅い華。首の紅い華が、何よりの証拠ですよ」
その言葉に、つばさは思わず首を押さえる。
「今のままでは、犠牲者も増えるだけだが。貴女自身の身も危ない。中途半端は、危険でしかないのですよ」
「私には、何の事かわかりません」
そう叫んで、走って帰る。
自宅に走り帰り、自室に駆け込むと。
荒い息のまま、震える指先でネクタイを取りブラウスのボタンをいくつか外す。
そうして、鏡に紅い華を映し出すと。
そこには、蕾である筈が咲きそうになっていた。
つばさは、声にならない声を上げベッドに潜り込む。
コレは、何かの間違い。
夢だと。


つばさが走り帰るのを見届け、老紳士はゆったりと公園を後にする。
主である、蓮二の元へ。
執事であるが故に、早く花嫁としての自覚を持って欲しかった。
覚醒しない事には、つばさは狙われてしまう。
覚醒しないと、蓮二の素早い助けは望めない。
「もう、刻限は迫っているのです。蓮二様、貴方様は優しすぎます」
吐息を吐きながら、言葉を漏らす。

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